野に咲く花のように:ビルマの竪琴

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ミャンマーにはあまりいい思い出がなかったので、いい思い出を作るために再訪問した。200ドルの強制両替は逃れられず。そのかわり、エアポートタクシーはボルボだった。でもエアコンは壊れていた。

ヤンゴン中心部に向かって走っている途中、赤信号で停車すると、すかさず亡命チベット人みたいな垢だらけの青年たちが新聞や雑誌を売りに来た。いらないので断ると、男は持っていた英字雑誌の下の方をニヤニヤしながら指差す。そこには「YANGON」と書いてあった。だから?

「トレーダーズホテル」というヘロインの主要生産地にふさわしい名の高級ホテルの近くにある二流ホテルにチェックイン。部屋は小奇麗だがお湯の出は悪い。そのうえ色々な人から両替や一日観光を勧められるが全部断って、カントージー湖近くのゲーセンに行こうとすると、インド系のガキが近寄ってきた。歳は自称14歳。でも背格好は小学生。

このガキが同年齢の日本人よりも流暢な日本語で話し掛けてきた。いやな予感がする‥‥。

僕はお金なんていりませんよ。日本語を話さないと忘れてしまうから、あなたと少しお話がしたいんです」だとよ。仕方がないから五分ほど世間話をして去ろうとしても、どこまでもしつこく追われ、離れてくれそうな気配がない。

あのですね、僕はお父さんとお母さんがいないんですよ」「ああ。聞かれてないのにそういう話すると怪しまれるよ」「そうですか‥‥世界で一番貧乏な国はどこだか知ってますか?」「バングラデシュだろ。じゃあな」みたいな会話をしながらタクシーに飛び乗ってまいた。

この国のゲーセンはかなり発展しており、日本と一年くらいの時差で大型筐体なども沢山置いてある。それはいいとして、しばらくすると殴り合いのケンカが始まった。店員と客のケンカなんだけど、殴ってる客が身長150センチの小柄な青年で、殴られてる店員が175センチくらいの青年。
しかし身長差をものともせず、小柄なほうは完全に目がぶっ飛んだ猛獣といった感じでおっかない。例えていうなら川俣軍司。そのへんのガラス割ったりして大暴れ。上半身だけ見るとバイオレンスだが、遠くから見ると二人とも民族衣装の巻きスカートなので、なんか間抜けである。

このほかにも街頭で二回、殴り合いのケンカを見た。ミャンマーも確実に暗黒化しているような予感を感じつつ、バンコクに戻った。
(文・クーロン黒沢)



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