ひとくちブックガイド:ストレンジャー・ペルシャから来た異邦人たち
大混乱のW杯さなか、どこから迷い込んだのか、冷蔵庫の中でヤモリが凍死していた。
背筋をのばし、仁王立ちのまま堂々と凍りついているそれは、チンケな小動物とは思えないほどの尊厳を漂わせていた。死して屍、拾うものなし。編集者よりメール。新刊「怪しいアジアの怪しいニュース」の見本誌ができたそうで、このぶんだと6月25日発売が確実。数ヶ月寝かせた努力は実るのでしょうか?
午後、アマゾンの読者コラムで散々酷評されているのが妙に気になり、迷った挙げ句、二千円も出して購入してしまった在日イラン人ノンフィクション「ストレンジャー・ペルシャから来た異邦人たち」を読了。
著者(犬好きの中年女性)が公園で犬の散歩中、怪しげなイラン人から声をかけられたのがきっかけで、むさいイランの男たちの飯を作り、入浴させてやり (一度の入浴でシャンプーとボディソープを全部使いきるのがイラン流)、公園で痴漢されたり、せっかく集めたイラン音楽の貴重なテープを全部消され、ビデオデッキをぶっ壊され、就職のあっせんをさせられ、麻薬パーティで散々バカにされ、セクハラされ、飼い犬をいじめられ、カネを貢ぎ、最後には公衆便所でレイプされてしまう……。警察はなにもしてくれないのよ!という暗がりからの叫び声が繰り返し繰り返し‥‥。
で「レイプした女はもうオレの女だ」というのがイラン流らしく、レイプ犯の男からしつこく交際を迫られたので警察を呼んだら「あんたの妄想じゃないの?」と半笑いでバカにされ、続いて謎の電話で「コロスよ。あなた」と脅かされ‥‥。この女、本当にアタマ大丈夫なの!? と心配させられる衝撃の内容。読後感の悪さは今まで読んだ本の中でも五本の指に入る。お勧めです。
(文・クーロン黒沢)