ビデオで「典子は今」をみつつ、ヤフーメッセンジャーにむかつくこと

　ビデオで「典子は今」をみつつ、冷蔵庫で程よく冷やしたドリアンを食いながら水を飲み、ヤフーメッセンジャーでチャットをすることにした。贅沢は若いうちにしておけ!　ということで、ドリアンをひときれ追加した。

　ヤフーメッセンジャーのアダルトカテゴリには、たまに露出狂の痴女がいる。イッヒッヒッ。と思いきや、今日は見当たらない……ので、女装者の部屋をみると、カツラをつけてバイブを尻穴に入れた男が映像を公開していた。が、三分も見てると飽きて撤退。

　ここらで一発、清くて美しい出会いを求めるため「美紀の部屋」だか「真紀の部屋」だか、とにかくそんな名前の和気藹々ムードな部屋に入ってみることに。たまにはオドケてみたりして、女の子の気をひいてみるのもいいかな。なんて。

　そこでは、ひとりの女と六名ほどのハイエナが会話を楽しんでいた……。で、ここから先は私だけのローカルルール。ヤフーの出会い系チャットルームは荒んでいることが多いので、まずは20秒ほど黙って様子を見て、おもしろくなかったら無言で退出することにしていた。

　美紀だか真紀だかの部屋に入ったときも、流儀に従い10秒ほど様子を伺った。すると「挨拶もできねえのかよ、バーカ」という文字が……。続いて「マナー知らずのアホ」「挨拶って何だか知らないの?」「さっさと出てけ」という嘲りめいたメッセージが!　(さっさと出てけ……は赤文字。どうでもいいけど、先方からの挨拶はなし)

　ショックで凍りついていると、パソコンのスピーカから甘ったるい女の声が響いた。「あのー、挨拶って、最低のマナーだと思うんですよぉ。それができない人とは、わたし、しゃべりたくないなぁ」
　だってよ……。何様なんだよ。死ねブス！　と思うも、ムードを壊すのも悪いなと思い直し「気がつかなくてごめんなさい」と素直に謝ってみたりもした。と同時に自分の懐の大きさ、器の巨大さ、偉大さに一人驚いてみたり、感じ入ったりしてみた。

　もしもオレがどっかのキチガイで、金正日並みの権力を持っていたら……。とりあえず全員、親族も含め調べ上げ、全員国後島の炭鉱に送り、秘密警察監視のもと、死ぬまで一日あいさつ十万回の刑。

　最後にボイスで罵ってくれた真紀だか美紀だかを硫黄島の特設処刑場で柱に縛りつけ、子宮に高性能爆薬を詰めてから起爆装置と携帯電話を接続し、彼女の友達が美紀だか真紀に電話をかけると、着メロ(葬送行進曲)とともに大爆発!!　という妄想と殺意を抱きつつ、チャットを続けた。

　さて、私が謝っても彼らは許してくれない。許すどころか、チャットで挨拶しないのは親を殺すよりも重罪だと言わんばかりに「てめーどうせアダルトばっか見て回ってんだろ」とか、簡潔に「バーカ」と言われたりしたのだが、罵られ慣れている私は平気だった。脈拍も血圧も平常時のままだった。
　でもその直後、殺し文句というか、私の脳髄に硫酸をかけるような言葉を投げかけてきた男がいた。プロフィールによるとまだ10代後半のザーメン臭いガキである。彼は私にこう言った。
「ネチケット守ろうよ」
　その瞬間、パソコンからLANケーブルを引っこ抜いた。理由は自分でもわからないが、この単語だけは聞きたくなかった。ネチケット?　は?　ウォシュレット?　どこでお勉強してきたんだよ、このオナニー野郎。

　私が金正日モードならこいつは懲役10トン。懲役10トンの刑とは、琵琶湖のほとりに作られた空のプール(10トンの水が入る)脇で自慰をして、プールを精子で一杯にするまで連日鞭打ち100回プラス重労働という、死刑よりも過酷な刑である。

　とまあ、バカな話はともかく、とても不愉快になった。

　もしも来週、プノンペンが何処かの国の軍隊に征服され、創氏改名令が布かれたとしよう。ネチケット拓哉か、もしくはオマンゲール万太郎か、どちらかに改名しなければ即刻銃殺すると言われたら、私は胸を張って後者を選ぶだろう。以上。