中国の新型インフルエンザ対策
やれ日本のインフルエンザ対策はやりすぎだの病的だの、そういった評判が立っているようですが……。
先月、用事でプノンペンから広州へ行った。乗ったのはいつもの中国南方航空。
私の斜め前に座る白人のおっさん(上の写真参照)。妙に落ち着きがなく、挙動不審だった……。で、機内食を配るキツネ目の乗務員(男)にチャーハンかソバかを(たぶん)執拗に中国語で訊ねられ、おれ中国人じゃねえからわかんねえよ!と三回英語で聞き返したら、殺意のこもった目で睨まれました。ま、愛想のいい乗務員もいたので、そいつは特別だったのかも。
さて、飛行機が広州空港に着陸すると、早速、マスクをつけた一団が乗り込んできました。インフルエンザ対策? 実際、その数日前にメキシコで多くの死者が出ていたこともあって、ずっとマスクをつけたままの客も少なからずいた。SARSの時みたいに体温計られちゃうのかな? と眺めていると、乗り込んできた検査員が妙に殺気立ってます。
集団は機の最後部から尋問を開始。妙に丁寧というか一向に終わりそうもなく、私の周りの乗客も段々イライラ。機内に怒声やバカ笑いが響き、なんだか怪しい雲行きに……。数分後、ようやく検査団が前方にやってきた。ピストル型の体温計で熱を計りながら、事前に配った質問シートを収集。
そのとき、検査団の長が鋭い叫び声を上げ、私の近くにいた男を指さした!
その男(中国人)は検査風景をこっそりケータイで撮影していたらしい。すかさず制服の係員が電話を取り上げ、問答無用で画像消去!
詳しく書くときりがないのではしょるが、数分後、私の斜め前にいた挙動不審の毛唐がおずおずとパスポートを出し、そのパスポートに「MEXICO」の文字が……あったもんだから。途端、機内がちょっとしたパニックに!
検査団が電話かけまくり、無線出しまくり、それまで笑っていた連中が一斉にマスクを付けだし、件のメキシカンはすっかり病原菌扱い。で、しばし尋問の後、哀れなメキシカンは連行されてしまった……。斜め後ろの私もうっかりすると隔離されかねない勢いだったが、なんとか飛行機から出してもらい、バスでターミナルへ。
ハイ。またまた検疫所の行列が……。先頭まで一時間。税関を抜けたのは着陸して二時間半後のことでした。ま、隔離されないでよかった。あれから二週間、一応熱は出てません。
(文・クーロン黒沢)