【闇の大人たち】第43回:喫煙者に捧ぐ 世界一殺風景な喫煙室
ニコチン中毒の喫煙者たちが最も苦手とするもの、それは飛行機である。
航空機はもちろん全面禁煙。「俺はトイレの中で水を流しながら便器に向かって煙を吐く」と自慢していた中年バックパッカーもいたが、見つかれば説教では済まされない犯罪行為だ。
長時間のフライトほど吸えないストレスがたまる。そのため、喫煙者は搭乗前に目の色を変えて喫煙室を探し、ここぞとばかりにバカバカ煙を吸い込む。この日の私もそんな一人だった。
四年続いた禁煙にしくじった二週間後、モダンに生まれ変わったプノンペン国際空港にたどり着いた私は、パスポートチェックを終えるや真っ先に喫煙室を探した。それはおしゃれなアイスクリーム店の奥にあったのだが──