ひとくちブックガイド:陰間茶屋とホモセクシャル
「江戸のかげま茶屋」という本を買った。
エネマグラ教典の参考書用として購入したが、全く、あまり参考にならなかったので放置していた。
改めて読んでみるといたたまれないというか、蔭間たちの悲惨さ(そうでもないのか?)に胸が痛む……とかいって、所々に散りばめてある”後家を抱き、坊主をおぶるかげま茶屋” “坊様が、けつをするのも古風なり” みたいな変な川柳には笑いました。
蔭間は生まれながらにして陰間ではなく、多くは12、13歳でその道に入り、親方からびっちりトレーニング(秘技伝授)されて一人前の陰間となる。まずは鴻門(汚いので当て字)に指を入れて洗浄し、口臭を洗い落とし、ついでに脇の下も洗う。ま、脇の下の臭いが無いとダメだ……という変態客もいるだろうから、その辺は好きずきで。
鼻に木片を縛りつけ鼻筋を通し、独自に開発された器具で鴻門を拡張。そしていよいよ専門の職人により貫通式が行われるわけでござる。
その際の痛みや恐怖心を取り除くため、鴻門にあらかじめ硫酸銅をひねりこめて直腸粘膜を腐食させ感覚を鈍くし、続いて山椒の粒を入れると痒くて痒くて、何か入れてもらわねばたまらなくなるので良いそうでござる。ひでえ話。
むろん、血まみれになることも珍しくなく、そんなときはすっぽんの黒焼きと油を混ぜたものを患部にすり込み、それでもアレならば丸薬を練り込み、重傷の場合は “釜破損につき今日休み” となり、箱根の底倉温泉で湯治するそうだ。
当時は「底倉で湯治する奴は皆男色」と言われるほど、ここにはケツを負傷したものばかりが集結していた。”そこくらで鋳かけて元の釜と成り” という具合で、こうならないよう、賢い陰間はKYゼリーみたいなものも使っていたらしい。
写真は両国の四つ目屋というアダルトショップが販売していた潤滑剤”通和散”の効能書き。ツバをブッと吐いて溶かし、こてこて塗ればよし……。
そもそも「オカマ」の語源は、インドのセックス教典「カーマスートラ」から来ているそうです。カーマとは梵語で「愛欲」という意。これが僧侶の間で(寺院でホモ行為が横行していたことで)男色の隠語として広まり、いつしか丁寧語の「オ」がついて、オカーマ……オカマになったとか。
ちなみに「マラ」というのも元々は梵語(マーラ)を僧侶がああしてこうして……。うわー。くだらねえ。でもね、ためにはなりました。というわけで、全体的に文体が新旧ごちゃごちゃに混ざって大変読みにくい本ですが、お勧めです。
(文・クーロン黒沢)