純喫茶の落日:ぼくらのオアシス、談話室・滝沢が閉店!

0d0d62e1談話室・滝沢。コーヒー1杯千円。でもケーキをプラスしても1100円。よくわからない価格設定の店。

和風の店内。落ち着いたイス。タバコ吸い放題。ウェイトレスは皆、人生の辛いところをなめ尽くしたような未亡人風。異常に礼儀正しい……。何時間ねばってもにこやか。客層は落ち着きまくりの、マダムやムッシューみたいなおっさんやおばさんばかり。

日の光が全く当たらない内装。池袋店など地下にあるので時間の感覚が狂ってしまい。ついつい二時間・三時間は当たり前。でも疲れない。余談だが店の中にコピー機がある……。

滝沢は私の生活には欠かせない喫茶店だった。そんな滝沢でYさんという研究者と会合。M社に在籍していたSさんがスティーブ・パルマーの背中を思いっきりひっぱだいて……などという逸話を聞きながらお茶を飲んでいると、便所に行ったYさんが顔面蒼白になって戻ってきた。

「たっ、滝沢がなくなってしまうって……」
「えっ!?」
「3/31で閉店だって書いてあるんですよ!」
「ま、まじですか!?」

そう。まじだった。滝沢グループの店。3/31にて永久閉店。昭和41年から長い年月でした。皆さまのご愛顧に感謝します──そんなことが店の前に達筆な筆文字で書き記してあった。ガーン。

「滝沢がなくなっちゃったら、僕らどうすればいいんですか」
「スターバックスとかで会えばいいでしょう」
「いやですよ。あんなスカした店」
「そんなこと私に言われたって!」

あせる二人の男。滝沢、本当になくなっちゃうの!? 今日だって、周りを見渡せば満員御礼。とても閉店に追い込まれる店の風景とは思えない。そ、そういえば、池袋店に欠かせない中年のサル顔ウエイター。彼の姿が見あたらなかった。いつも、流れるような手つきで客をあしらい、サービスの全てを知り尽くした滝沢の権化。そんな男が見あたらない。奴はどこだ!? どこに行ってしまったんだ!

全国の金持ちの人たちに告ぐ。い、いますぐ滝沢の救済をお願いします。救済可能なら談話室・田中でも、談話室・山下でも何でも我慢しますから!
(文・クーロン黒沢)



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