実録クマエの昼ごはん : 工場地帯で「涙の女工スープ」を味わう
マシーンのように黙々とミシンを踏む女工さん。彼女たちだって人間です。昼ごはんを食べます。
プノンペンの南の果て。見渡す限り一面、縫製工場だらけの地域があります。聞く所によると、このエリアだけで大体10万人の女工さんが働いているんだとか。そんな彼女たちのお昼ごはんを想像出来ますか?
行って来ました工場地帯。拙者、お世辞にも金持ちではありませんが、お世辞抜きに金持ちとはいえないクマエの中で浮かないよう、下級役人コスプレ姿でいざ出陣です。
プノンペン中心部からバイクで約30分。凄まじいホコリで目はショボショボ。辿り着く前に失明するかと思いましたが、なんとか着きました。
時刻はちょうどお昼前。工場玄関には休憩時間を今か今かと待ちわびる屋台の集団が陣取っています。
マンゴーサラダに、揚げた練り物、串焼き等──。どれも値段は1000リエル程度。中心部で売られている店屋物と何も変わりません。
その中に、拙者見かけないものを発見。ビニール袋に入った黄土色の液体。ちゃぶ台の上にところ狭しと並べられています。
おばちゃんに聞くと、女工さんのため、特別安い食材でこしらえた特製スープだそうで、これが飛ぶように売れているそうです。値段はな、な、なんと500リエル(約10円)。これは安い。爆安です……。
女工さんはこの特製スープを飲み、これまたビニール袋に入った白飯300リエルで飢えをしのいでいるのです。
拙者もひとつ買って飲んでみましたが、アレです。おばちゃんの言った「特別安い食材」の何かの葉っぱと何かの動物の肉が口の中に残ります。このスープ、すごいです!
拙者が悶絶していると、休憩時間を迎えた女工さんたちが、短い自由をエンジョイするため一斉に飛び出してきました。例のスープは文字通り、飛ぶように売れています。袋詰めのストックは数分で完売。せわしなく、鍋からすくってビニールにジャボジャボ。
じっと見ていると、500リエルのスープと300リエルの白飯すら、友達と分けあって食べている人がいます。かなりの厳しさが伝わる光景です。時折浮かべる乾いた笑顔が印象的でした。
彼女たちの最低賃金は月61ドル。先日、首相のひと声で80ドルに値上げされましたが、それでもストライキが頻発しています。以前、同僚だった女工経験者が──。
「食べ物が本当に酷かった。お金がないから、お腹が空いても我慢して食べない日もあった。でも、田舎の家族のためだから頑張るしかなかった」
そう言って涙していたのを思い出しました。
(文・木村五兵衛)