カンボジアの素:空港のカレー
この記事は90年代にミニコミとして出版したガイドブック「カンボジアの素」に書いた記事を復刻したものです。後年、情報を追記したりしていますが、全体的に古すぎ、記述が攻撃的で、正確ではありませんので、読んで懐かしむ程度でお願い致します。
プノンペンからバンコクに帰る日がやってきた。私はブータン帰りの謎な夫婦(やたらニコニコして英語しか話さない!?もちろん日本人だ)のチャーターしたタクシーに便乗させてもらい、ポチェントン空港までタダで行くことが出来た。よしよし。
謎の夫婦は国内線だったので私は彼等に礼を言って別れ、国際線のターミナルへと向かった。時計を見ると出発二時間前。絵に描いたように理想的なチェックイン体制である。しかし、カウンターに向かった私の前に思わぬ看板が!。
「DELAY」
看板に書かれた時刻は出発予定の2時間後。つまり今からだと4時間後を意味していた。ちなみに(94年ごろの)ポチェントン空港はノーエアコンで無料の蒸し風呂状態だった。
いまならプノンペンまで帰るところだが、当時は運命に流される性格だったため、空港周辺で時間をつぶそうと決意。でも暑さにはいたたまれず、併設された町食堂風の空港レストランに入る。もちろんクーラーは無い。
背の高い扇風機が3台動いているのが妙に文明的だった。食堂の中には何人かの軍服を着た偉そうな奴らと、妙に偉そうにしている白人が数名いた。ちなみに食堂の窓から外を見ると、同じ飛行機に乗るカンボジア人やら通行人やらといちいち目が合ってしまいちょっと怖い。
ウエイターが来た!私はアイスコーヒーを注文。数分後にコンデンスミルクがなみなみ入った生ぬるいコーヒーが製造到着し、私は時間潰し体勢に入った……。ちょうどその時、仕事で使うためにノートパソコンを1台持ってきていた私はエグゼクティブサラリーマンよろしく、バックパックから出してマージャンソフトを起動。しかし、この時程、周囲の視線を痛いほど浴びたのは初めてだった。でも超ヒマだったので続けたけど。
2時間後……。いくらなんでもコーヒー1杯で2時間は気がひけたので、ニコニコしているウエイターを呼んでカレーを注文。カンボジアで食べたモノにロクな印象が無かったので、コレにも全然期待してなかったんだけど、やってきたカレーは具もガンガンに入ってるし、肉はやわらかくて巨大で味もいい。
カンボジアらしくないよ……。私は、フランスパンと一緒に頂いたが、カンボジアのフランスパンも妙にうまいので、すっかり記憶から消えなくなってしまった。もう一度食べたいが、店はもうない。(1994・K)
空港はこのあと改築されて、ぶっこわされて、また改築されて、略奪されて改築されて建てなおされて‥‥。いまでは結構びびる位の立派な建物に生まれ変わりました。おしゃれで高価なカフェもオープン。空港だけはすばらしいです。本当に。陸路で来て陸路で去るつもりの貴方も、一度は空港を見に行きましょう。戦勝記念塔より面白いよ。(2004)
(文・アジアの素編集部)