カンボジアの素:ISP
くされプロバイダばっかり!
私がこの国で契約している「テレサーフ」というISPは素晴らしいサービスでその名を知らぬ者はいない。64K常時接続で毎月一万円弱(従量制)という価格はまあ、よしとしよう。日本にもそういう時代はありました。
いきなり速度が1/10になったり、予告なしにブチブチ使えなくなることがあるのも、よしとしよう。ただ、一日の半分くらい、ブチブチする状態が何日も何日も続くと、いつも冷静さを失わない私の血圧も危険なまでに上昇する。でも心配はご無用。夜間でもクレームを入れることができる専用の電話番号が用意されているからだ。
電話をすると、女が出た。「使えないんだけど」というと、「ああ、基地局の工事ですから、問題ありません」と返された。昨日もそう言われたし、おとといもそう言われた。「復旧は?」と訊ねると「わかりません。明日になるかも」と、涼しい声が返ってきた。彼女にキレても仕方ないので、震える手で受話器を置いた。
テレサーフはこの国最大の携帯電話会社が片手間で運営するISPだ。テレビ局や銀行なども傘下に持つ巨大企業である。
数日後、またもや突然ネットが停まった。通算数千回目。わざわざ電話するまでもなく、放っておけば数分後か数時間後か数十時間後に復旧するのはわかっていたが、ごくまれに、支払いを怠ったどっかのバカと勘違いされアカウントを停められることがあったので、一応確認のためクレームの電話を入れた。
……のだが、自動アナウンスが流れるだけで誰も応答してくれない。
何度か電話して諦め、何気なくテレビをつけると、楽しそうなパーティの映像が流れていた。それは、くそISPの親会社が主催する社員パーティの生中継だった。みんな、酒飲んで踊っていました。
そんなプノンペンに新しいISPが登場──これです
現在使っているテレサーフは家の屋根に平型のアンテナを取り付け、市内に点在する基地局と電波で更新するというシステムなのですが、新しいWiCAMというISPは大げさな専用アンテナなどはいらず、市内の主要エリアから直接、無線LANでインターネットに接続できます。
これまでも、空港や高級ホテルのカフェ等に無線LANのホットポイントを設置するISPはありましたが、市内中心部を概ねカバーというのは、とても便利。でも、スピードと値段はどのISPも大差ありません。
(文・クーロン黒沢)