埼玉の至宝:蕨ミニシアター再訪

s-0021ジェラルド君と昼飯を食う。やることもないので、五年ぶりに世界の魔窟・蕨ミニシアター(ストリップ小屋)を再訪することにした。

というわけで京浜東北線で蕨駅に降り立つ。以前と比較してほんの少しあか抜けたものの、渋谷あたりと比べれば絶望的にさびれている。渋谷にポルポト派を千人放逐、百年間放置したらこんな感じになるのかな。

駅前で浮浪者が古雑誌を並べて百円で売っていたが、そのなかに「バディ(ホモ雑誌)」が混じっているところが蕨である。さて、駅前の露店でホモ雑誌を買う冒険者をこの目でしかと見てみたい気もしたが、時間がないのでミニシアターに急ぐ。もう潰れているかも‥‥と危惧していた蕨ミニシアターはまだ残っていた。

汚い階段の上で、ハゲた男がしわしわのチケットを売っている。二人分七千円渡すと「ハイコレ次回から三千円になるよ」と、会員証をくれた。ありがたい。

まっ昼間だというのに、八畳ほどの小さな客席はほぼ満員だ。目をぎらつかせた税務署員風のスーツ男、精神的に病んでそうな作業着姿の男、口半開きのよだれ親父など、女よりも客のほうがある意味すごい。

ダンサーの九割は南米ポニータ。日本人は入れ墨の入った顔のきつい女がたったひとり。この女、やる気のない踊りの後、ポラロイド撮影(一枚500円)を募るが希望者ゼロ。すると突然怒り出し、何やらブツブツ言いながら舞台裏に消え、他の女と罵り合いをはじめ、それはライブで観客席に響き渡ったのであった。

南米女に手を消毒液で拭かれ、彼女たちの胸や尻をわし掴みにして人生のうっぷんを晴らすブルーカラーの男たち。南米ダンサーの腹のあたりを良く見れば、刃物で刺された跡がある者も珍しくない。で、中盤になると脈絡もなく募金箱が登場。

「サアこの募金箱のお金は、障害者施設に寄付サレマース」

という、超信用できないアナウンスがゆるやかに流れ、ピンク色に光る募金箱が客席を順繰りに回ってくる。男たちがウソだと知りつつ、ケツさわりたさに競い合って小銭を入れる姿が印象的だった。

この他、トイレの陰の真っ暗なスペース(舞台は見えない)に座り込み、30分あまり微動だにしない謎の三人組についても書きたいが、それはまた今度。
(文・クーロン黒沢)



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