今直ぐ私の口座に金を振り込んでください

s-0050日本から少々ぺドっ気のある知人・Bさん(仮名)がやってきた‥‥。おみやげにプロレスビデオを貰い、少し嬉しい。

そんなBさんはお肌がとても弱い。昨年プノンペンに来たときも変な虫に刺され、そこが膿んできて足がパンパンになり、バイタクに紹介されて行った変な街医者に足の付け根を切開された上、神経を切られまっすぐ歩けなくなってしまう──という豪快な顛末を見せつけてくれるのだが、決して金がないわけではなく、ケチっているわけでもない。世の中には不思議なことが色々ある。で、今回そういうことがないよう、まるまるリュックひとつぶんの医薬品を背負ってきたそうだ。

抗生物質から真菌剤、各種用途別の薬用石鹸、医療用の消毒薬などなど‥‥。テレビなどで「ネパール山奥の村々を回るお医者さん‥‥」みたいな番組をやっているが、確実にその人たちより大量の医薬品を持ち歩いているのは言うまでもない。

長年の経験から特に皮膚病に関しての知識は恐ろしいものがあり、皮膚のトラブルに悩むバックパッカーたちがBさんの部屋を訪れ「ああ、これはブドウ球菌ですから心配しないで」などと診断を受けつつ薬を貰う光景も目撃。充実した一日であった。

なんでも初めて按摩屋から連れ出した女がカンジタ持ちだったそうだが、すぐ自分で応急処置を施してやり、女を呆然とさせたそうな。いい話というか、なんというか。理解を超えた世界である。そんなBさんはホテルの従業員に気前よくチップをはずむことでも知られ、従業員はホテルのオーナーよりもBさんに忠節を尽くす下僕状態。

今年もBさんがプノンペンに来るや、伝えてもいないのに空港前にホテルの従業員が待ち構え、彼がチェックインするや、下で従業員たちが先走って宴会を始めてしまうほど。

そのなかの一人が、Bさんの出発前、カンボジアから抜け駆けしてEメールと速達を寄越してきた。いわく「僕は大学に行きたい。つきましては学費700ドルを私の口座に振り込んでください。日本の三菱銀行からも振り込めます」とのこと。なめられているのか、頼りにされているのか‥‥。
(文・クーロン黒沢)



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