倒壊する本棚を決死の覚悟で支えた話

th_genba

世界むるるん紀行なる連載をはじめました。先週の夜中、なんとなく本棚をいじくっていると、ポキッ……という、枯れ木が割れるような音が聞こえた。えっ? とその場に凍り付く間も、

ポキッ……メキッ……メキメキメキ……

私の本棚は高さ2メートル。籐で出来ていて、3つ平行に並んでいる。1996年。スラムの籐職人に作ってもらったもので、来年ちょうど10歳。埃のかぶった柘植久慶とか落合信彦とか毛利元貞の胡散臭い本でぎっしり埋まっているのは言うまでもない……。

漠然と見守るうち、一番奥の棚が木の葉のように揺れた。

いやな予感がしたけど我慢できず、小指でちょんちょん突いてみると、棚全体がプルンプルンとプリンみたいな動きをしながら、ゆっくり、ゆっくり。1ミリくらいずつ私の方向に倒れて────

瞬間、両方の手で支柱をがっとつかみ、足でふんばった。今回、海外旅行保険には入らずに来たので、押し潰されても治療費は全て自腹。なので、逃げようかどうしようか0.9秒近くぎりぎりまで悩んだものの、この本棚が潰れると新しいの買わないといけない、三つあるうちのひとつだけ種類が違うのは格好悪い、そうなると全部買い換えで非常に面倒臭いし金もかかる。だから、圧死覚悟で支えましたよ!

約20分余り、全身汗まみれで倒れようとする巨大な本棚を支え、時折足と手と口をのばし、中の本を手当たり次第ひっつかみ、遠くに放り投げたり、蹴り出した。
15分後。空っぽの本棚と部屋中に散乱する本に囲まれ、狩りに失敗した猛獣のような息遣いで天を仰ぐ私。時刻は午前4時50分。棚はなんとか倒壊を免れた。とりあえず布テープで弱っている部分を縛り、翌朝、凧糸と釘で応急処置を済ませた。
(文・クーロン黒沢)



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