プノンペンの超弩級廃墟

冒頭の絵は韓国系資本がプノンペンの中心部に建設中の高層ビル「ゴールドタワー42」。2007年に工事が始まり、2011年に完成予定だったが、着工から5年経った今、31階まで建設中というか、すでにここ一年は放ったらかしで腐りかけている。最中心部だけに目立ちまくりで、さながら墓標のようでもある。

5年前、知人と連れ立ってショールームを見に行った。買う気も金も無かったが暇だったので行った。三階建てのショールームにはモデルさながらの若くて白くて足の長いキレイな女の子がミニスカートで待機しており、(訓練されたものか、自然なものかはさておいて)初々しい笑顔で時折はにかみながら、こちらのお部屋は160万ドルですとか、我々が腰を抜かすような金額をまるで天気の話でもするかのようにつぶやいていた。あの時点で「6割売れてます」とのことだったが、本当に売れていたのか、確かめようがないので真相はよくわからない。

その後、郊外に建設中だった韓国系ニュータウン「カムコシティ」が釜山貯蓄銀行のスキャンダルでふっ飛んだ直後、ゴールドタワーの工事用リフトがめっきり動かなくなり、人が段々いなくなり、何年も後に着工したビルプロジェクトが次々完成するなか、今も不気味にコンクリむき出しでそびえたっている。PVの撮影に使ったら良い映像が撮れそうだが……。

アジアで新築の分譲マンションを買うのはある意味博打である。判断基準は完成予想CGとプラスチックの模型とモデルルームとパンフレットのみ。実物が設計図の状態でエイヤッと購入。完成に近づくにつれ(リスクが減るぶん)価格が上がるが、もちろん良い部屋から売れてしまうし、利回りの良さ気な人気物件はパンフレットと模型で完売みたいなことも普通だ……が、運が悪いと施工主の資金繰りひとつで悪い噂が町を駆け巡り、詐欺物件の烙印をおされてしまう。

小走りで投資に来た外国人の皆さんを諌める記念碑として、アンコールワットともども、後世に残して欲しいものである。

ゴールドタワーのショールームでもらったハードカバーの豪華パンフレットも、私のキワモノ印刷物コレクションのひとつとなってしまった。


成金カンボジア人のリサーチはぬかりなかったようだ。プノンペンでも有名なドケチバックパッカー(山林地主の息子)の福島の実家にも白いグランドピアノが──(もちろん誰も弾けない)


売出時のゴージャスなテレビCM


夢いっぱいの建設現場


今の姿


てっぺんのクレーンがまた不気味。
(文・クーロン黒沢)



“プノンペンの超弩級廃墟” への4件のフィードバック

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  2. J.G.バラードの世界だ。RT @kurosawa6502: プノンペンの超弩級廃墟 http://t.co/rbTcdwWQ

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