PP隣の昼ごはん : ナシレマックと一粒の涙 | Singapore Kitchen

海南チキンライスが美味しくて有名なお店にて、私が犯した致命的な過ち──

プノンペンに長いこといると、無性にさっぱりしたものを食べたくなるときがあるんですよね。そうめん、かけそば、お茶漬け……。

日本じゃともかくカンボジアとなると、少々気の利いた和食レストランにでも出かけないとありつけず、しかも結構お高くつきます。

360ストリートの老舗「シンガポールキッチン」は、そんな「さっぱり気分」のとき、お世話になるお店です。

ここの4ドル(3.5ドルだったかも)海南チキンライス=タイで言うところのカオマンガイは、在住外国人のみならず、中国系やローカルにも評価が高く、マレーシアあたりで食べる海南鶏飯とほぼ同じ味です。

骨付きなのが気になりますが、私の独自調査によると、多くのカンボジア人は骨なしの鶏肉があまり好きではないようで。
理由は定かではありませんが、我々が韓国人経営の和食屋で突き出しのキムチに「?」と感じるあの時と、似ているのかもしれません。

本題に入りますが、私はこの店で致命的なミスを犯しました。海南鶏飯を注文しようとメニューを眺めたそのとき、近くに記された「NASI LEMAK」の文字に心奪われてしまったのです。

ナシレマックとは、ココナツミルクで炊いたご飯にサンバルチリソース・ゆで卵・揚げた小魚を添えたマレーシアの軽食。豪華版では揚げたチキンやカレーがプラスされます。ちなみにこれ、私の大好物でして、つい、指をツツツと動かし、ナシレマックを注文してしまうのでした。

あれだけ美味しい海南鶏飯を出すんだから、ナシレマックもいい線行ってるんじゃないか……。期待に胸を膨らませ、25分待ちました。はい、やけに長いこと待たされました。そして登場。ジャ~ン!

供されたのは、私の知るナシレマックとは何かが違う。異質な「何か」でした。

アジの素揚げに、妙に甘ったるい佃煮風味のソース。おがくずみたいな色のカスカス・チキンフライ。油がじっとり染み込んだ揚げ卵……。見覚えがあるのはココナツライスとキュウリだけ。

忘れたくても忘れられない……。

七年ほど前、日本人が経営する、プノンペン市内のとある有名居酒屋で天丼をオーダーしたことがありました。
しばらくして出てきたのは、丼の白飯にエビの入ったアメリカン・ドッグがふたつ。その上にウスターソースを適当にかけた、わけのわからない創作料理。あのときの衝撃が脳裏に蘇ります。

楽しい昼食は台無しとなりましたが、ここの海南チキンライスが絶品なのは悔しいけど認めざるをえません。皆さん、浮気心は怪我のもとです。インディアン嘘つかない。
(文・クーロン黒沢)

SINGAPORE KITCHEN
#110 Street 360,Chamkar Mon District
092 674 106

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