犬に噛まれたらダッシュ! 狂犬病の権威 パスツール研究所

プノンペンの町をふらふらお散歩。朝の空気を切り裂いて犬が登場。あなたの足をガブッ! 経験ありませんか?

私には経験があります。六年ほど前に──。

幸い噛んだのは小型犬。出血もほとんどないかすり傷でしたが、頭の中は「狂犬病」の三文字でいっぱい。震え上がって宿に戻り、流水で傷口をジャジャカ洗いの恐怖に顔を引き攣らせました。でも金もねーよ!

えい! 何の根拠もないけど大丈夫だったことにしよう! というわけでこの件は封印。潜伏期間とされる三ヶ月間、本当にイヤな気分を味わいました。皆さんは真似しないでくださいね。

もしあなたが狂犬に噛まれたら? 駆け込み先は「パスツール研究所」しかありません。モニヴォン通りの北端、カルメット病院の南隣に佇む地味な建物です。

狂犬病ワクチンを発見したフランス人、ルイ・パスツールによって設立された、フランス系の由緒ある医療研究機関。プノンペンのそれはフランス占領統治時代に作られた出張所で、かれこれ百年もの歴史があります。こいつは心強い。

二年ほど前、プノンペン市内でガッツリ犬に噛まれたある日本人。某病院に駆け込んだものの、天文学的な治療費を吹っかけられ激しい口論に発展。そのとき相手の医者が捨て台詞に残した「そんなに金が無いなら、パスツールにでも行けよ!」とのお言葉に従って出向いてみると、そこは教会の如き慈悲深い施設で、噛まれたことを伝えた直後、低価格の狂犬病ワクチンを接種してくれたのでした。

受付のオバサンによると、カンボジアで原因不明の病気にかかった場合、ここに来れば大抵の病理検査が可能。それでも原因がわからない最悪の事態に陥っても、本家フランスのパスツール研究所に病理サンプルを送り、精密検査を行うという徹底ぶり。狂犬病に限らず「これ、普通じゃないよ!」的な自覚症状を覚えたら、まずはここで検査をお願いしましょう。

余談ですが昨年、ワットプノン近くの暗がりで知人が二人組のオカマ強盗に襲われ、財布とケータイを奪われる──という事件がありました。逃げようと激しくもみ合うさなか、一人のオカマが知人の腕に思いっきり噛み付いて、右腕に血まみれの歯型が付くというオマケつき。話を聞いた私は、もちろん自信を持ってパスツール研究所をお勧めしておきました。
(文・本因坊)

厚生労働省 狂犬病Q&A

パスツール研究所
#983-5 Monivong Blvd., Phnom Penh
023 426 009

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