哀れな工場労働者の生き様を歌い上げた名曲に涙する5月の夜

これぞ女工哀歌。女工の恋の現実をしっとり歌い上げた名曲を発見!

女工さんといえば、はなっから報われない職業と相場は決まってまして、このカンボジアにおいても残念ながら負け組という他有りません。

働けど、働けど、暮らしは楽にならず、薄給で食いものにも苦労する毎日、それでも両親にだけは苦労させまいと毎月律儀に仕送りだけは忘れない、健気な娘さんたちです。

そんな生活ですから、殿方との「恋」も思うようには行きません。カンボジアでは今、女工さんの叶わぬ恋を歌った曲が、女工を中心に大人気、違法コピーされまくりで密かなヒット作となっています。

歌の名前は「ケーミエンソムナン、オーンミエンタープネー」。日本語にすると「貴女は幸運ね、私は泣くわ」といったところでしょうか。
とんでもない糞翻訳で申し訳ないです。歌い手はカンボジアを代表する妙齢歌手メアス・ソクソピアさん。艶っぽいしっとりとした歌声が人気です。

PVのストーリーをここで書くのは悲しすぎるのですが、かいつまむとこんな感じでしょうか。

恋人関係の若い男女が一組、男は学校へ、女は縫製工場で男の学費を稼ぎます。二人は将来を約束し仲睦まじく生活をしていました。
しかし……学校に通って外の世界を知った男、チャラい女に引っかかります。それを知らずに毎日働く女、健気です。
男はチャラい女に金を使い徐々に苦しい生活に陥りますが、それでも彼のためにと不平ひとつ言わずに働く女。
そんなあるとき、女は男の秘密を知ってしまうのです。

女が買い物に出るとそこには、知らない女を連れて気取っている男の姿が!
女は気づかれないように隠れますが、見つけてしまった男は紛れも無く自分の愛した男。
悔しさと、悲しさ、そして自分の不幸に涙が溢れ出します。

そして出たのがこの歌のタイトルにもなっている、貴女は幸運ね、私は泣くわ……。というセリフです。
拙者、PVを見ながら大号泣。この記事を書きながら思い出して大号泣と泣かされっぱなしです。

思い起こせば100年ちょっと前の日本でも、近代国家の礎を築いたのは、富岡製糸場に代表される製糸・縫製業の女工さんでした。
時代は繰り返されるのでしょうか、それともこれは近代国家へ成長を遂げるために避けられない儀式なのでしょうか。
難しいことはわかりませんが、彼女たちが悲しい星の下に生まれたことは紛れもない事実。

そんな、現実に嫌気が差して今夜は場末のカラオケで一杯やりたいなって殿方もいることでしょう。
一曲歌って、女工出身の売女を涙させるのも一興です。
(文・木村五兵衛)



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