寝不足で、ハッと我に返ると西川口の駅に立っていた
KKベストセラーズで新刊で使う写真を選んだり、キャプションつけたり‥‥。この手のことは今まで人まかせにしてばかり。自分でやるのは実は初めて。余談になるがベストセラーズは新大塚にあるキレイな新築の建物。しかし近所のバアさんとうまくいってないらしく、社員全員、その人に気をつかっているらしい。
終わって買い物して家に戻ると、テレクラにはまっている真っ最中な徳川君が遊びにきた。一昨日、自宅に帰ろうと電車に乗った徳川君はなにかにひきよせられ、ハッと我に返ると西川口の駅に立っていた。で、テレクラに入ったらしい‥‥。
「それで、うまく行ったの?」
「ええ、一本目の電話の女がいきなり、私のオマンコなめたい? 私いまクリトリスいじってるのよ!って叫んだんです」
「ハハハ。大漁ですねえ」
「ええでも。会おうとしたら蕨のホテルで先に待っててくれっていうんです。で、その時点でまずいことに僕の本名と携帯の番号はもう教えてたんですけど‥‥」
「それで?」
「薄気味悪いから駅前で待ち合わせようって言ったら、いきなりその女がキレだして‥‥」
「はあ」
「私がブスだったら、あんた逃げるんでしょう!って。それはそうなんですけど、そのあと、私は障害者手帳も持ってるのよ!馬鹿にすんな!って怒鳴られましてね‥‥」
「ずいぶん腰が引けてるね」
「ま、なんだかわかんないけどスイマセンって謝ったんてすよ。そしたら一層キレ出して、あたしの友達にはテキヤもいるのよ!って、いまからアニキに電話するから!って‥‥」
「兄貴ねえ」
「ケータイいじって、わざと聞こえるように話すんです。自作自演なんでしょうけど、怖いからあえて突っ込めませんでした。ああ、アニキ?いま私のこと馬鹿にしてる奴がいて、そいつの本名は徳川で、携帯の番号はこれこれなのよ。で、いま西川口のテレクラにいるから脅かしてよ!って電話口で叫んでるんです」
「ただの気違いじゃないですか」
「そうなんですけど‥‥。それで、いまアニキたちがテレクラとり囲んでるわよ!もし怖かったら素直にホテル来なさいよ。気に入らなかったらお金払ってくれればいいからって‥‥」
「取り囲んでるのかよ!」
「怖いから電話切って帰ろうとしても、すぐテレクラの方に電話かけて僕の名前連呼してるみたいで、取次ぎの兄ちゃんが青い顔して僕のこと呼ぶんです‥‥」
「かわいそうに‥‥」
「兄ちゃんの受話器持つ手が震えてるんですよ‥‥。直接はっきり行きたくないって伝えたら、あんた、ホテル来るのか警察行くのか、どっちなのよ!って金切り声あげて」
「警察行きたいよねえ?」
「警察行きます‥‥って言ったら。どこの警察よ!って凄んでくるし、結局合計三時間、テレクラであやまってました」
「それで許してくれたの?」
「わかりませんねえ‥‥」
「これでもうテレクラ懲りたでしょう?」
「いや、これからですよ‥‥フフフ」
長い一日だった。