北タイ取材記 : バイオレンス・チェンマイ その3 禍々しい公衆電話を発見
チェンマイで見かけた味わい深い公衆電話。全国の電話マニアに贈る電話グラビア。
古都チェンマイ。おだやかで、雄大で、静かで、小鳥のさえずるイメージが浮かんでしまいますが、薄皮一枚ひっぺがすと、バイオレンスな裏の顔が見えてきます──。
私の趣味のひとつに、公衆電話の写真撮影があります。携帯電話の普及により、使う機会も姿を見る機会もグンと減った公衆電話。私はなぜか、そんな公衆電話に惹かれます。
どんな電話でも良いかというとそうではなく、使い込まれ、荒れ果て、人々の悪い気を吸って吸って、ボロボロになってしまった電話にのみ、アンテナが反応するのです。
幸い、チェンマイの公衆電話はどれも中々良い感じ。毎日、いい電話と出会うたびパチリ、パチリと写真を撮ってにっこり。そんな私すら戦慄する横綱級と出会ったのは、滞在三日目、正午過ぎのことでした。
薄暗いバスターミナルの片隅に並んだ公衆電話。その一番端に佇む緑色の一台。パッと見小ギレイですが、よく見ると受話器がとんでもないことになっています。真っ二つです。
二本の銅線により、辛うじてなんとなく原型を保っているブランブラン状態の受話器。両手を使わねば満足に通話もできません。一体誰の仕業だ!?
失恋の末のやけくそか、クビになった腹いせか──。はたまた、とんでもない馬面の人が必要にかられ引きちぎってしまっただけなのか? 理由は定かではありませんが、チェンマイが侮れない町という事実だけは認識できました。
(文・クーロン黒沢)