北タイ取材記 : バイオレンス・チェンマイ その8 極北のショッピングプラザ

チェンマイ近郊を車でうろついてたら、なんかとんでもないショッピングモールに迷い込んだ!

古都チェンマイ。おだやかで、雄大で、静かで、小鳥のさえずるイメージが浮かんでしまいますが、薄皮一枚ひっぺがすと、バイオレンスな裏の顔が見えてきます──。

チェンマイ滞在中。レンタカーを借りました。タイで車を運転した経験はあるし、チェンマイからパタヤまで、ノンストップで十数時間運転したこともあります。但し交代で、何度か死にかけましたが。

タイは日本と同じ右ハンドルの左側通行です。カンボジアに長くいると馴染むまで二〜三日かかります。馴染まないうちは非常に危険で、ぼんやりしてるとつい逆走。ウィンカーを出そうとしてワイパーを動かしてしまうこともザラです。

そこで初日は無理せず、市内近郊を流しました。北へ行こうと北上するも、いつの間にか道を間違え、チェンマイ南部の小さな町、ハーンドンに着いてしまったのはいいとして、途中で迷い込んだショッピングモールが怖かったのでご紹介します。

国道108号線、チェンマイとハーンドンの中間地点に “KAD FARANG Shopping Plaza” という看板を見つけ、休憩のため左折しました。広大な駐車場に車はゼロ。駐車場横には貧乏臭い食堂が一軒。何気に覗きこむと、店員の一人が立ち止まり、まるでよそ者を発見した落人部落の見張りみたいな目で、訝しげに私を睨みます。

相当大掛かりなモールらしく、建物もそれなりに凝ってます。ですが、奥にずいずい進んでみたところ、ありとあらゆるお店が全てシャッターをおろし、人の気配が全くありません。

ひとつだけ、レストランらしき建物が「OPEN」という看板を掲げていましたが、先月仕入れた腐りかけの野菜がそのまま出てきそうで入るに入れず、広大な敷地内を一時間ほどだらだら散歩。結局、冒頭に出会った食堂店員を除いて、一人の人間も見ないまま探索が終わってしまいます。

折角来たのだから、と、件の食堂でコーラを買って一気飲み。と、なんとなく眠くなってきて、木陰のベンチでしばしウトウト。ハッと我に返った私は、暗く、湿っぽい地下室で手足を拘束されていることに気づきます。と、先ほどの食堂店員が冷たい笑みを浮かべながら、数秒おきにケタケタ笑いを繰り返すマントヒヒを伴って登場。ウヒーッ、ウヒーッと恐ろしげな奇声を発しつつ、私とマントヒヒの結婚を宣言する──こともないまま、無事、チェンマイに戻りました。
(文・クーロン黒沢)

ハーンドン

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