プノンペンアート散歩 : 21世紀のアンコール芸術

博物館隣にたたずむ王立芸大の中庭のすみっこの方で、プノンペンを象徴する驚くべき物体を発見!

私の趣味はアート鑑賞です。小粋なギャラリーでひとり「サム・レンシーって誰かに似てるよなぁ、そうだ、山田五郎だ!」等と物思いに耽ったりするのが、なによりの楽しみです。

そんな私は暇になると、プノンペン王立芸術大学を訪れます。そこら中で作業する若き芸術家たちを眺めながら、訳知り顔で頷いてみたり。と、目の前に何か大きなものが現れました。

「不良少年」というカンボジア語のプレートが埋め込まれたセメントの塊は、直径1.5メートル。高さ2メートル近い大きさ。塊の上には「処刑教室1999」風のポンコツバイクが溶接されています。

セメントの立方体には、四面にそれぞれ緻密なレリーフが刻まれています。最初の面は「家庭内暴力」。ババア、金出せよ! やめとくれ、なにするんだい……みたいなやりとりが聞こえてきそうなそれには、転がり落ちる仏像。お兄ちゃんやめて!と足にしがみつく妹。そして、兄貴の片棒担いで引き出しをバールでこじ開ける鋭い目つきの弟など、臨場感バッチリに仕上がっています。

続いては「ひったくり」。盗んだバイクで奇声を発し、子連れのお母さんからハンドバッグをひったくる! 後ろでは仲間が新参者にヤキを入れ、膝蹴りが顔面に決まってます。まさに外道……

お次は仲間の溜まり場でしょうか? カップルで注射をキメる麻薬中毒者、泥酔する三人組。一心不乱に歌いまくるカラオケ狂。そのすぐ後ろでは不純異性交遊が……。まさに地獄のパーティです。

そしてラストの四面目「償い」──。過ちの日々を反省するも、頬はこけ、出たらたぶん3日以内に同じ罪で戻ってきそうな表情が素敵です。

今世紀のプノンペンを具現化したこの作品。一見の価値ありです。
(文・クーロン黒沢)

不良少年 | モン・コサール作
プノンペン王立芸術大学 中庭

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