僕、ボランティアした場所で宿を世話してもらうことにしてるッス
プノンペンで暇があったら、道行くバックパッカーに面白スポットを訊ねてみよう!
10年前ったらアータ、暇つぶしといえば女か薬かどっちかだったが、今じゃボランティアが大人気。世の中変わったもんだ!
プノンペン郊外にあるという日本人経営の某フリースクール(寺子屋?)はそんなボランティアの皆さんをいつでもウェルカム! 難しいことは考えるな! 子供たちと戯れるだけてもオーケー。君も遊びに来てネ! という敷居の低さで、にわかボランティアフリークに大人気。
論より証拠、旅行者の集まるゲストハウス周辺のバイタクが「ヘイ、ボランティアするか?」みたいな客引きをしてるそうで、いまや定番観光コースと言っても過言ではないという。
が、今回このフリースクールをどうこう言うつもりはない。やり玉にあげるのはフリースクールではなく、そこに集まるボランティア大好きな純真ボーイズ&ガールズである。
ボランティア、奉仕活動……という言葉自体は美しい。けど、キレイな羽虫も近寄りすぎるとグロいように、美しさの裏には醜悪な現実がある。佐竹さん(仮名・日本人)は、プノンペン市内で活動する某援助団体職員。ある日、面倒を見ている某学校の正門前でぼんやりひなたぼっこしていたところ、ボロ布を身に纏った薄汚い日本人(ギターを背負った大学生風)に突然肩を叩かれた。
「スミマセン、あなたここの関係者? 僕、所持金100万円でボランティアしながら世界を放浪してるんス。 ぜひボランティアで子供たちと遊ばせて欲しいんス!」
そうは言っても今日は祝日。子供なんていやしない。そう伝えると、
「お願いシマスよ。ねえ、せっかく日本からボランティアで来たんスから! ねえ、僕ブログもやってるンす!」
ブルブル首を振りながらしつこく食い下がるのだった。仕方なく、佐竹さんは近くにいたカンボジア人の先生に頼み、近所の子供を無理矢理呼んできてもらった。しかし、奴はそれでも不満そうだ。
「僕、今からギターで日本の曲弾きますから、あの人たちも呼んでくださいっス」
そう言って奴が指さしたのは、向かいの建設現場で休憩中だった上半身裸の肉体労働者たち。ムリだよ! と言うも、頑固なボランティア野郎が納得するはずもなく、結局は労働者たちも観客に加わり、待望の演奏会が始まった──らしい。だが……。
ボランティア君はギターをはじめてまだ数週間。演奏というか、素人の練習風景を強制的に見せられたみたいな、例えるなら新しいバツゲームって感じで、全員しらけムード。と、いつの間にか演奏会は幕を下ろし、ボランティア君が恐ろしいことを口にした。
「あの僕、ボランティアしたところで、宿を世話してもらうことにしてるんスよ!」
はあ!?
呆れて開いた口が塞がらない佐竹氏。本当に絶対ムリだから……と断るも、ボランティア君は「でも僕、お金ないんス」と執拗に食い下がる。おまえ、100万円持ってんだろ? それ使えよ! と言いたいがいえない。その奥ゆかしさが日本人の弱点なのか……。
結局、学校側の好意で教室に寝泊まりを許されたボランティア君。先生方の夕食にちゃっかり紛れ込み、腹一杯食って佐竹氏にひとこと。
「あの僕、教室で寝るんだったら、佐竹さんの部屋に泊めてもらいたいっスけど」
「絶対いやです」
最後のラインはキッパリ断った佐竹氏。それでもボランティア君は一週間も学校に居座った挙げ句、晴れ晴れとした顔で次の目的地・インドに旅立って行ったそうな。そんな佐竹氏に質問した。
「佐竹氏、もしそいつがかわいい女の子だったら、自分の部屋に泊めてました?」
すると
「泊めてたでしょうね。でも、どんなに美人でも根性腐ってたらたまんないですね」
プノンペンの夏はまだこれからだ。
(文・クーロン黒沢)
お久しぶりです。
ボランティアってお金持ちの道楽だったのに、
気軽にできるようになったんですね。
って、あの頃も女の子たちに小さなボランティアしているつもり
だったのに・・・
とか言ったら、怒られそうだ・・・
はじめまして、、、。゜ヾ(・ω・*)ノ
クーロン黒沢さんのファンです。blogやってらしたんですね。
4冊くらい読みましたが、どれも笑いまくりでした。
世の中広いなあ、、といい勉強になりました。