任天堂の弁護士から届いた愉快な書類
90年代頭のタイ・バンコク。アソーク通りにほど近いインド大使館そばの超一等地に、ミスター西本(仮名)の友人であるB氏(タイ人)の仕事場があった。
現地TV局からCG製作を請け負っていたB氏は、とりあえず仕事なんかしなくても余裕で食っていける名家の出。金など欲しいだけ湧いてくる大金持ちだった。
いい具合に膨らんだ噂によると、B氏はタイで11番目の金持ち。かつ爺さんが6番目の金持ちという話だった(確認はしてません)。ドイツから輸入した特別仕様のポルシェで渋滞地獄のバンコクを疾走し、トゥクトゥクや汗まみれで屋台を引くおっさんを煽りまくるB氏はフランス育ちでタイ人のくせにタイ語が苦手。
庶民の気持ちなど三回生まれ変わってもわからない……そのうえSGIのマシンがあるのに、仕事で使うのはアミーガ3000という変わり者だった。
そんなわけで、B氏のオフィスにあるSGIの某マシンは使う者が誰もおらず、埃をかぶっている状態だった。仕方なく、若き日のラリった私がインド人の絵とか描いて遊ぶ専用機になっていた。
今日もミスター西本の「ヒャヒャヒャ黒沢君、インド人の絵うめえじゃん。夕飯なに食う?」などという声を聞きながらインド人の絵を描いていると、日本でバイト軍団の隊長を勤め、いまは某有名企業の重鎮になりつつあるA君から一枚のファクスが届いた。
ミスター西本の話によると、任×堂の弁護士が我が社に面白い手紙を送りつけてきたそうだ。 それを聞いた私はかなり動揺したが、ミスター西本は同い歳でありながら、全然余裕の平気平気の屁のなんとかで 「ヒャヒャヒャ、山×博って書いてあるよ……黒沢君、ハタチのガキにこんなもの寄こしやがって、オモシれえよネー。
クソー上等だよ任×堂。俺様が潰してやるよ潰す潰すヒャヒャ、黒沢君夕飯なに食う? 麺類はそろそろ飽きたよネー」 と、どちらかと言えば夕飯のことを心配しているようで、まったく恐ろしい男だった。
(文・クーロン黒沢)