西川口のテレクラでアポを取ったらモンゴル人が来たお話

s-0029うちの近所に佐竹(仮名)というおばさんが住んでいる。

佐竹さんは最近家を改築したばかりで絶好調だが、必要以上に見栄を張るという厳しい部分がある。生け花を教えたり、たぶん死ぬまで使わないだろう中国語を習ったりしていて、まわりには「うちは家柄がよろしいのよ」という類のことをベラベラしゃべっている。それはそれで結構なことなんですけど‥‥。

今日僕が外に出ると、ちょうど佐竹さんが通りかかった。なぜか大きな風呂敷包みに日本人形を包み、それを背負っていた‥‥。近所同志、一応礼儀として軽く挨拶をするが、佐竹さんの世間話はスウェーデン人ポルノ男優のチンポ並みに長いので内心シマッタと思った。

案の定、聞かれたくもない個人的な質問を二、三投げられる。仕方ないのでこちらも軽い反撃を試みた。

「ところで佐竹さん、なに背負ってるんですか?」
「アアコレ、これは運動のために背負って歩いているのよ」

短い人生だが、こんなもの背負って運動している人を見たことはないし、今後も見ることはないだろう。質屋にでも行くんすか? と喉まで出かかったが、やめておいた。

「ソレデー黒沢さん、あなた車持ってたわよね」
「えっ、買ったばかりなのによくご存じですね」
「チョットね。それで、アタシ足が悪いから今度のせてってもらえないかしら?」

なんであんたを乗せなきゃいけないんですか?

「いつも町会長さんに頼んでるんだけど、今度の土曜は都合が悪いって言うのよ」

それは、あんたを乗せたくないから多分うそですよ。

「だからオネガイしますよ」
「ええ、でも僕も土曜は仕事でいないんですよ(うそ)」
「アラー残念ね。タクシー使ってもいいんだけど、このへんなかなか捕まらないのよねー」

 おう、じゃあ俺が走ってひろってきてやるからタクシー使え。タクシーを。

「ところでアナタ、駐車場はどこなの?」
「えーと、(すぐ近くですけど)すごく遠いんですよ」
「ソウナノ。でも近所の○○さん(印刷会社)なら、土日は会社休みだからタダで置かせてもらえるわよ。うちなんかいつも親戚が来るときは○○さんの敷地に置かせてもらうのよ」

 そうですか‥‥。でもそこまで図々しくないもんで。

「ところでうちの親戚はベンツなのよ‥‥、あなたの車は?」
「ええ、しょぼい車です。じゃあそういうことで‥‥」

じゃあ親戚のベンツで送迎してもらえこのくそババア。だが、近所付き合いは大切、あえてなにも語らない。そんなことがあった夜、ジェラルド君(仮名)から電話があった。

「ハアハア」
「どうしたんですかジェラルド君」
「実は今日、西川口のテレクラ行きまして、珍しく一本目のそれも五分でアポがとれて、待ち合わせの場所に行ったら相手がモンゴルの女性だったんですよ。日本語けっこう話せましたよ‥‥ハアハア」
「それで‥‥どうしたんですか」
「うちに連れてきてやることやりました。モンゴルの女性はロシア語が話せるんですね‥‥ハアハア」
「おめでとう。これで国際人の仲間入りですね‥‥」

ジェラルド君の電話を切ってすぐ、ミスターPBXから電話が入った。ウラジミール氏と久々に会うので、一緒に吉祥寺まで行こうとのこと。

早速、谷Kも誘って三人でミスターPBXの車で発進。その前に100円パーキングに入れる100円玉が無かったので肉屋で80円のコロッケを三枚、一万円札で買ってひんしゅくをかいながら路上で食った。肉屋のコロッケには家庭で出せない味がある‥‥とミスターPBXがうなった。

発進したのはいいが、どう行けば吉祥寺に着くのか三人とも知らなかった‥‥。一時間半もかけて、道に迷いながら吉祥寺周辺に着いたのは随分遅い時間だった。

ウラジミール氏の家は曲がりくねった路地を歩いた飲み屋の裏で、ドアの前には飲み屋の仕込み用に魚の入った発泡スチロールの箱と炭酸水がうず高く積まれている。そんなウラジミール氏の自室には、少なく見積もって10台以上の無線機があり、世界中の電波を受信していた‥‥。

近所の店に移動して、喋ること三時間。ヘロヘロになった僕と谷Kを自宅近くまで運んでくれたミスターPBX。まったく疲れてない様子で、これから藤沢まで帰るという。その間、余談として聞かせてくれた話だが‥‥。

彼はよく、オディゴで女を釣ってるらしい。そんで、いざ外で会うことになり待ち合わせの場所で待っていると、すべての女が彼の顔を見た瞬間、あまりの恐ろしさに石化してしまうそうだ。そんな恐ろしい顔のミスターPBXだが、とてもいい人である。
(文・クーロン黒沢)



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