二つ前の席に座る中国人の女がいきなり泣きわめき出した話

s-0035 朝六時起きでエアポートバスで成田へ。昨日徹夜だったのでバスで寝ようと考えていたが甘かった……。

 発車するや、二つ前の席に座る中国人の女がいきなり泣きわめき出し、五秒おきに「ベリリ‥‥ベリベリ‥‥」と、なにか得体の知れないものを破くような音が車内に響く。不気味さに誰も文句を言えず、バスはそのまま成田空港に到着。少々イラついていた私だが、降りる際、彼女が座っていた席に破かれた女性週刊誌となぜか10香港ドルのコインが置いてあった‥‥ので、慰謝料としていただく。

 今回はキャセイ航空、面倒臭いが香港乗り換え。香港まではスムーズに事が運び、寝不足でフラフラしながらもたばこを吸うため喫煙室に向かう。ここの喫煙室は地の果てのような場所にあって、巨大空気清浄機八台ががなり立てる騒音で発狂しかねない勢い。そんな場所で眉間に皺を寄せ、煙草をふかす世界各国のろくでなし‥‥。

 ついでにバンコク行き便の搭乗ゲートがとんでもなく遠い場所にあり、一服してからノロノロ探し出したのはよいものの、喫煙所から余裕で30分も歩かされ、出発ギリギリの搭乗。飛行機はほぼ満席状態で、遅れてきた僕は理不尽にもビジネスクラスに座れと言われ‥‥。
 「いえいえ、遅れたのは私なのですから、便所の片隅にでも立たせてくれれば満足です。ホホホ……」
 そんな紳士的台詞が頭をよぎるが、渋々アップグレードを受け入れるのであった。
 バンコクに着いたのは夜半。到着ロビーでははるばるマニラからやってきた人身売買ブローカーのTさんが僕を待っていた。ただ、決して僕のことが好きで来てくれたのではなく、彼が日本に置き忘れた使い捨てコンタクトレンズを僕が運んできたから。という切ない理由。

 今回は車を借りている。空港のレンタカー屋で手続き、トヨタのソルーナという日本では見ない大衆車を借りた。オートマ1500cc。今時パワーウィンドウも無い割には新車同様・走行距離も三桁という不気味な車。

 バンコクまでは渋滞で一時間かかった。高速使ったはいいが出口間違えた挙句、道に迷い、スクンビット・ソイ4の駐車場が広いだけが取り得なうすらでかい某ホテルにたどり着いたのは九時過ぎ。何便か早い直行便で来た下条君がこのホテルで待っていてくれている筈。先ほどのTさんはド渋滞のアソークで「僕はここでいいから」と消えてしまった。

 僕はこの「某ホテル」と相性が悪く、まともな部屋をあてがわれたことがない。エレベータの中にまで灰皿がついているという、喫煙者にとっては天国のようなホテルだが、今回もテレビ故障、トイレを流すとバスルームが水びだしになり、部屋の電球はひとつしか点かなかった。壁のあちこちに小さなゴキブリがはい回っている。こんなんで700パーツもしやがる……。

 荷物をおろし、下条君の部屋をノックすると、パンティープで買ってきた日本製のエロゲーをノートパソコンにインストールしている最中だった‥‥。



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