ノキア802SEというケータイ電話を買った。その後

いつまで待っても702NK(Nokia 6630)のアンロックはできねえし。たぶん四年くらい使ってる白黒液晶の携帯はくたびれ果ててきたし、ボーダフォンの802SEが欲しい。

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でも、解約がめんどくさい(今更日本国内でボダフォン使う意志はない。タイやらカンボジアで使う端末ほしいだけ)。どうしようか迷っていたら、直言型の典型ともいえる尾藤さんが「おれもつきあってやるよ」というので、池袋に向かいました。上の写真は802SEではありません。その顛末は……。

東急ハンズ前のゲーセンで尾藤さんと合流。運がいいことで評判の高い彼は、私を待つ最中にも、ゲーセン内で数百円入った小銭入れを拾っていた。警察に届けるのもバカバカしい金額。どうしようかとしばし迷うが「そんな小銭ネコババしても、ツキが落ちるだけ」という結論に達し、ゲーセンの店員に届け出ていた。

その足で、ビックカメラとさくらやで価格調査。と、802SEはどちらも在庫切れ。そのうえ新規契約はダメで、機種変に限るという。

店員を呼び止めて理由を尋ねると「いやあ、深い事情がありまして……」と言われ、思わず「そうですか……」と意味もなく納得。たぶん。我々と同じ事を考えている連中が星の数ほどいるのだろう。噂では、バンコクの携帯屋に数十台単位で即日解約した802SEを売っている連中がいるそうだし、同行していた尾藤さんもまた、数日前に北陸某県で802SEを購入していた。もちろん解約前提で。

さくらやの店頭には、ボーダフォンの販促姉ちゃんがいた。彼女は胸元から金メッキのケースに交換した702NKを取り出し、我々にみせびらかした。

「ほら、ケースも色々交換できるんですよ。きれいでしょう」

フン。お前の702NKでC64のMULEは動くか? スーファミの香港97は動くか? フォント入れ替えたか? MSXにZX81は……それじゃ……。と福島なまりで自慢の反撃をかましたくなったものの、実機は家に置きっぱなし、そもそも解約したから電話できないし、なにより大人げないので「キレイですねえ」と述べるに留めた。

というわけで、新規契約ムリかと諦めていると、尾藤さん曰く「量販店じゃなくて、怪しげな携帯ショップに行ってみようよ」

ちょうど、さくらやの隣が胡散臭い携帯安売りショップ。そこで6200円の値札がついた802SEの在庫を訊ねると、ありますよという。新規で契約できるか? と訊くと、店員のメガネはちょっと考えるふりをしながら「で、できますよ」と言った。ハードル高い。

できるのだったら、いざ契約。と、メガネは流れるような口調で規約内容を説明する。解約時のトラブルとなる店独自の違約金はないそうで、かわりに、二年以内に解約すると10500円だかの罰金が発生する「ハッピーボーナス」という、間抜けな名前の割引サービスに強制加入が義務づけられる。

するってと、細かい話ですが、端末本体6200円+初回事務手数料2500円だか+ハッピーボーナスの解約罰金10500円……の計19000円だかが。白ロム(解約した端末)入手までの必要経費という計算になる。メガネ男は「ハッピーボーナスはどこのお店で購入されても、大体強制ですから」と、追い打ちをかけてきた。しょうがねえ……と、申し込み用紙に記入をはじめようとしたそのとき……尾藤さんが叫んだ。

「あのさ、ハッピーボーナスって、ハッピーじゃないよね!」
「はっ……(メガネ男・呆気にとられる)」
「大体、二年も解約できないって、おかしくない?」
「そ、そうですかね?」
「そうだよ。人間、なにがあるかわからないじゃん」
「なにがとおっしゃいますと……」
「事故とかで死ぬかもしれないし、ホームレスになるかもしれないし」
「はあ……」
「どうするの、そしたら!」
「えーっと……(呆然)」
「大体さあ、ボーダフォンって、ほっとんど電波入らないでしょ」
「いや、そんなことないですよ。ほら」

というや、メガネは机の下からボーダフォンのパンフを出して、3Gカバーエリアの地図を我々に示した。だけども悲しいことに、その地図は真っ白けに近く、たとえて言うならシマウマの模様みたい、田舎は全滅といった感じだった。

「と、都内ならほぼ全域問題ありませんし……私もほら、ボーダフォンの携帯つかってるんですよ(といって、エプロンからボーダフォンマークの端末を出すメガネ)」
「なにこれ、真っ白じゃん。これじゃ、いつ使えなくなるかわかんないよ」

だったら公衆電話でも使えよ。と怒鳴り返せないのが、日本人セールスマンの悲しさ。

「で、でもですね……」
「そもそも、ボーダフォンって、大丈夫なの?」
「えっ……。大丈夫ですよ(少し自信なさげ)」
「潰れそうだって聞いたけど(でかい声で)」
「そ、そんなことないですよ。あ、あの、お客様。わかりました。そこまで仰るんでしたら、今回は特別に、年割りの方で契約させてもらいますんで……」
「よかったじゃん。黒沢君」
「よかったっす」
「あのですね。そのかわり、すぐに解約なんてことをされますと……。ウチのほうもまずいんで、それだけは是非……」
「ああ、勿論、わかってますよ」
「でしたら申込書にご記入を……」

こんな経緯で、解約時に失う金が5000円節約できました。ありがとう尾藤さん。

その後、メガネから投げかけられた「インターネットに接続されますよね?」「あのー、メールは」「紛失時の保険は……」等の質問に対し、矢継ぎ早に「いりません」「しません」「結構です」という返答を重ねるうち、向こうもこちらの意図を理解したらしく、応対が投げやりになったのはいいものの、無事に端末をゲット。

「黒沢君が解約する前に、ボーダフォン潰れちゃえば楽なのにね!」

という尾藤さんのつぶやきに、メガネの手が震えていたのを見たときは、少々心が痛んだものの、翌々日、ボーダフォンショップで無事解約しました。

白ロムが手に入ったら、お次はシムロックの解除。わざわざマーブンクロンまで持って行くのも面倒臭いので、目をつけていた仙台のアンロック業者に二千円で依頼。翌々日に受け取って、無事に一件落着。ちなみにこの業者、802SEだけで一日40-50台のアンロックをするとのこと。大丈夫なのかボーダフォン……。って私が言えた義理じゃないですけど。

因みに、ロック解除済みの802SEは4万円オーバーで販売できるそうだけど、今回そういうみみっちいことはせず(此所に至るまでの自分の所業もかなりみみっちいが)、末永く使おうと思いきや、802SEを実際使ってみると、でかい上に触感やらなにやらがチャチく、あんまり好きになれないんですよねえ……。

というわけで、現在は尾藤さんがくれたNokia 3100にゲーミングケースを装着して使っています。バカバカ光って面白いです。802SEは、大切にしまってあります。
(文・クーロン黒沢)



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