ひとくちブックガイド:北朝鮮の不良はヤッパ気合いはいってた
北朝鮮という国はともかく、北朝鮮関連書籍は大好物だ。昔は出るものほとんど大体買っていた。金日成全集やら雄山閣・岩波系はそうでもなかったが、いわゆる「下司な朝鮮本」は必ず買ってました。
最近プームで一気に出版点数が増えたせいか、似たような内容の本ばかりなので控えめにしているものの、それでもついつい目につくと買ってしまう。そんななか、記憶に残る朝鮮本に
「北朝鮮不良日記」という作品がある。著者の白栄吉氏は、北朝鮮で有名な愚連隊を率いていた不良。名前が「栄吉」っていうのも、どことなく矢沢っぽくてカッコいい。
一般市民ではなく、迫害もそれほどではなく、食うにも困ってないヤクザの視点から見た北朝鮮というのが興味深い。
北朝鮮の喧嘩はバイオレンスだ。ナイフ当たり前、しかし相手に致命傷を負わせることはせず、刺すときは必ず太ももを狙う。練習は犬を使うらしい。南の犬は殺されて食われるだけだが、北の犬は喧嘩の練習用にナイフを刺され、終わった後は食われてしまうというわけだ。
チンピラだった栄吉氏は川で溺れていたガキを救ったことで、ある日突然国家的英雄となり、エリートスパイ要員として特訓を受けるハメに陥る。が、元来真面目に働けないからヤクザをやっていたのであり、将軍様が直々に考えた殺人訓練でしくじり、スパイ学校を除隊。それでもしぶとく賄賂とコネでうまいこと出世した栄吉氏は悠々自適の生活を送るが、さる事件がもとで逮捕されてしまう。
が、手下の手引きで脱出に成功。栄吉氏を慕う紡績工場のスケバン(死語)に匿われ、当然彼女とSEXとかもしつつ、北朝鮮脱出を決意。というわけで全編これ義理人情。義理のためなら殺しも平気。兄貴のためなら命もいらんぜ!。てな感じでムンムン漂う男臭い内容にクラクラ。
対して、エリート外交官として北を脱出した高英煥氏の「ソウル暮らし・平壌暮らし」は関西人好みの薄味、かつエリートならではの慎み深い内容だ。
高氏は元外務省・金正日の通訳もしたことがあるという超エリート。ザイール大使館から亡命するまでは主体思想に染まりきっていた。
そんな人がいきなり韓国に来てしまうと、北のプロパガンダと現実とかぐちゃぐちゃで混乱するようだ。高氏は南の人の見栄っ張りに驚き、住宅ローンに憤り、地下鉄のラッシュアワーを嘆き、新聞に横文字が多いとボヤき、特に韓国の交通マナーに関しては後半かなりのスペースを使って苦言を呈している。でも、苦言を呈しても殺されないだけマシである。
(文・クーロン黒沢)