PP隣の昼ごはん : 汁まみれの喜び | チョップスティックレストラン
日本で頑なに汁もの+麺類を避けてきた私がいま、長年のトラウマと向きあいました!
私の大好物といえばカレーうどんと麻婆茄子。麻婆茄子とは今でも友達付き合いをしていますが、カレーうどんとは目を合わせないようにしています。
忘れもしない高校生の夏休み。町のそば屋でカレーうどんを注文。ツルツルツル、シャーッ!っと粋な感じですすり尽くし、何気に下を見ると、洗いたてのシャツがカレー汁まみれに。家から六駅離れた商店街での悪夢。そこから先の記憶はありません。何をされたか覚えてないのです。
閑話休題。カンボジアにはノムバンチョックという、のびたそうめんにココナツミルクベースの濃厚なスープをかけて食べる料理があります。過去の悪夢が再現するのは目に見えてましたから、意識しながら避け続けていたのでした。
プノンペンの西のはずれは、別名・昼ごはん不毛地帯と呼ばれています。砂漠めいた暑さの中、干からびた肉まん、コレステロールの値がふりきれそうなレバーペーストサンドイッチ、かと思えば、汗まみれの野郎どもで湿気ムンムンの屋台。そんなところにぽつんと「健康志向」を売りにする小奇麗なレストランがあり、場末で働く健康志向の人々が出入りしています。私も御多分にもれず吸い寄せられてしまいました。
メニューは少なく。チャーハン、ビーフロックラック(賽の目に切った牛肉のあんかけ)、そしてノムバンチョック。健康志向なポスターを眺め、この期に及んでチャーハンをオーダーしたら読者は落胆するだろう。そう判断して2.5ドルの野菜ノムバンチョックを注文。屋台と比べると高価ですが、小奇麗な薬味の盛り付けといい、それだけの価値はあると思います。
食感も何も、見たままの野性味溢れる味わい。毎日これだけ薬味を食べればビタミンと便秘と繊維質の心配は無用ですね。ついでにチキンカレーベースの別バージョンも試してみましたが、ツルツルッと食べ終え、ハッと我に返って下を見ると、シャツはグリーンとレッドの染みでいっぱいでした。
(文・クーロン黒沢)
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