男は黙ってマセラティ。あいつと入れ替わりたい
カンボジアもご多分に漏れず、ここ数年はバブル景気に沸いていた。
そして、全世界のバブルがはじけまくった今も、まだ気がついていない成金たちが高級車を買い漁っている。いいかげんそろそろ気づいてると思うんだが……。
プノンペンに来たことがあれば、この町のランクル率の高さに驚くこと請け合い。昔はボロボロのボロ車しか走ってなかったのに、今では最新型のランクルも珍しくない……どころか、町で見かける半数が最新モデル。残りの大部分も5年落ちの一世代前だ。
4月には遂にフェラーリを発見(360モデナ)。知人は目つきの悪い中学生のガキがランボルギーニ・ガヤルドを運転する様を目撃。じっと見てたら視線がカチ合いそうになり、慌てて目を背けたという……。
そして昨日、プノンペン郊外のきったないでこぼこ道を走っていたところ、前方から辺りの雰囲気と違和感ありまくりな黒いスポーツカーが近づいてきた。ああ、あれはマセラティ・グラントゥーリズモ。税抜き1500万円。日本ならコイツの消費税でしょぼい軽自動車が買えちゃう。専用ラゲッジセットはフェラガモ製……。
運転席には横町の屋台と中華鍋が似合いそうなTシャツ姿の真っ黒な青年(推定17歳)が──。今日、生まれてはじめてカンボジア人を対象に「あいつと入れ替わりたい」と思った。
(文・クーロン黒沢)