プノンペンの動物王国
道で男がニワトリを売っていた。なんとなく衝動買い。
オス、メス一羽ずつで二ドル也。つまり一匹117円59銭(本日20:00現在)という計算になり、缶コーラと同じくらいだ。そういえば、先月は六万円のデジカメを衝動買いした。どうでもいいけど六万円を全てニワトリに注ぎ込むと510羽買えることになる。エサはなにをやればいいのか聞いたら「そんなものは適当でいい」と言われた。
食うためではなく、卵でも産んでくれれば‥‥。という思いである。以前はずっと処理されていない卵を食べていた。ラーメンの具にする程度ならいいが、殺菌処理されていない卵は一応、生で食べられないことになっている。知らなかったので醤油かけて生で食いまくっていた時期も長期に渡るが、幸い腹はこわさなかった。
買ってきたニワトリを放つ。はじめ緊張していたようだが、次第にニワトリ特有のカクカクしたブレイクダンスみたいな動きで歩き回り、バラまいた安い米を食べ始めた。男の元ではかなり飢えていたらしく、食い方は半端じゃない。
第二のムツゴロウを狙っているわけではないが、うちには二匹の狂犬も住んでいる。犬は早くも日頃のストレスを発散したいようで、目を怪しくギラつかせながら襲いかかろうと隙を狙っている。
いきなり食われてはたまらないのでニワトリを軽く隔離してみたが、犬はハアハア息も荒く、バウリンガルがあったら「殺す、殺す、なぶり殺す!」みたいな声が左右から聞こえてきそうなヤバいムードだった。卵は無事に収穫できるのだろうか。自信がない。
(文・クーロン黒沢)