エネマグラ教典:没原稿 強制純潔主義
「エネマグラ教典・ドライ・オーガズム完全マニュアル」
太田出版 クーロン黒沢・ポッチン下条
ドライ・オーガズムのいい話が300ページオーバー。ひとりでできる禁じられた快楽のすべてをここに集約! 将来、日本に始皇帝やヒトラーのようなタイプの指導者が現れた場合、焚書にされてしまう可能性大!燃やされる前に書店で一冊どうぞ。
このページが日の目をみる頃、太田出版よりひっそりと密売されている「エネマグラ教典」ですが、おさめきれなかった没原稿が沢山ありまして、捨てるのも勿体ないのでここでこっそりと公開して、雰囲気だけでも知ってもらいたいと思うんですが、所詮没原稿なので本の内容とはあまり関係なかったりして。
[注]
本書はオナニーを禁ずるのではなく、あくまでちんぽこを握ることなく、別の視点から宇宙的な究極の快感(通称・ドライ・オーガズム)に近づこう。という趣旨です。念のため。
射精管理はドライに役立つのか
かつて英国に、”恐ろしい真実”というサイトがあった。「英国の保守的カトリック教徒」が運営しており、読んでみると、
「妹が黒人とデートしているようなのだけど、どうしたらいいのでしょうか」
「はい。世の中には”良い黒”と”悪い黒”がいますが──」
みたいな話が沢山載っているブラックジョークサイトであった。で、ここには通信販売のページがあり、愛のない非道徳な人々を鍛え直すための、様々な純潔道具が売っていた。
アンチ・マスターベーションパンツ
強化プラスチック製。ペニスは上向きで固定される。形はカッコいいが、後ろも塞がっていてエネマグラが入らないので却下。
アンチ夢精毛布
電源付。就寝中に湿ると電気ショックが流れるので夢精防止……。チンコの先が無意味に濡れてるだけで感電の危険大。
好色思想追放ヘルメット
好色な思想を根絶するために開発された製品。ヘルメットは常時脳波をモニターしており、好色な考えが検知された場合、吐き気を引き起こす低周波を放射する。恐ろしい。
その他、下着やベッドシーツなどに塗りこみ、微量でもザーメンが感知されると紫色に変わる「ザーメン感知クリーム」などもある。値段や連絡先の住所まで詳細に記載されており、妙に真剣なので本当に販売してると勘違いする人も多いようだが、基本的には冗談である。 しかし、冗談じゃなくこれを真剣に実践している人々もいる。純潔マニアと呼ばれる愛好者たちだ。
純潔マニアとは、自分のパートナーに貞操帯を着用させ、浮気を禁じて永遠の純潔を誓わせる。もしくは自分が着用して純潔を誓ってしまう……という性癖をもつ人々のこと。
最近の貞操帯はオールステンでシリンダー錠は当たり前。貸し金庫並みのセキュリティが売りだが、肝心の鍵を着用者自身が管理していたのでは貞操帯の意味がなく、自然、鍵は他人へ委ねることになる。
封権時代の男たちは大変だったのです。
金属アレルギーの人は注意。
南京錠は信頼できないという方々にはシリンダー錠タイプもございます。
もしあなたが学校でいじめられているなら、こいつを着けて身体検査に望もう! 不気味がられること請け合いだ。
自分の下半身を他人に丸投げするのはさぞかし不安だろうが、愛好者のサイトをみると
「人間は頭だけ出した状態で一日中箱の中に入れておくと、顔が性感帯になる」
……など、素晴らしい台詞が盛りだくさん。「純潔契約書」「性欲管理承諾契約書」などの雛型があらかじめ用意されていたりするので、名前を書き入れるだけで鍵の管理者と正式な契約書を交わすことも可能。これで将来、法廷で争うことになっても安心というわけだ。
と、ここまでは、純潔を愛する人のための情報である。しかしわたしはこれら純潔器具を、ドライへのプロセスに応用できないだろうか……と考えてみた。
エネマグラでドライへ行くためには、ウェット。つまり射精してしまっては元も子もない。そのため、エネマグラ使用中はなるべくペニスに触れないよう注意しなければならないが、初心者は我慢できず、ついつい暴れ馬をいじってしまい、シーツを濡らしてしまうことに……。
そこでエネマグラを使う際、男性用貞操帯やら純潔チューブなどの器具を併用しチンポコを保護することで、キー無しでは暴れ馬に触れられないシチュエーションを作り、ドライを演出してはどうだろうかという次第であり候。
純潔器具の鍵を自分で管理するのも可だが、いつでも開けられるという安心感と、面倒臭いから先に開けてしまえという誘惑と始終戦うことになり、気が散ってオナニーに集中できないばかりか、純潔グッズの意味も薄れる。
話の分かる知人や友人がいれば万々歳だが、身寄りも腹を割って話し合える友もなにもない場合、誰に鍵を預かってもらうかが文字通りキーポイントになる。で、本当に困ったら以下の方法はどうだろうか。因みに、先へ進むほど開錠可能になるまでの日数が長く、しかも戻ってくる可能性も薄く、難易度が高い。
その1・鍵を溶かしたロウの中に沈めて冷やし、ロウ漬けにする。
→もう一度溶かして取り出すか、削り出すしかない。
その2・大鍋でカレーを作り、鍋の中に鍵を沈めてしまう。
→底のほうまで食べ終わらない限り、開錠できない。カレーが嫌いな人は豚汁でもおでんでも可。
その3・瞬間接着剤を鍵穴に流し込む
→自分で解決法を見つけるまでは開錠不可能。ここまで来た人なら、本格的な純潔マニアの道へ進むのも悪くないだろう。
その4・海外の存在しない宛先に鍵を書留扱いで発送
→存在しない住所なのでいずれ返送されてくるだろうが、戻ってくるまで最低一ヶ月はかかる。戻ってこない可能性もあってドキドキ。送り先をモロッコ等にすると、尚更スリルが味わえるかもしれない。
(文・クーロン黒沢)