北タイ取材記 : バイオレンス・チェンマイ その2 超おっかない古本屋さん
気むずかしい店って世界中にあるんですね。ということで、古都チェンマイにもありました。
古都チェンマイ。おだやかで、雄大で、静かで、小鳥のさえずるイメージが浮かんでしまいますが、薄皮一枚ひっぺがすと、バイオレンスな裏の顔が見えてきます──。
チェンマイ滞在中、同行した本因坊記者が不平を述べました。
「あんたが予約したホテルは高すぎる。僕はもっとリーズナブルな宿を探します」
「どうぞご勝手に!」
仲間割れの危機ですが、そこは大人ですから、私も安宿探しに付き合いました。一軒、二軒……想像した通り、中心部のホテルはやはり高い。でも、いい歳こいた大人がドミトリーとか泊まるのも抵抗あるしなぁ。ていうか、ドミトリーなんてあるのか?
行けども行けども満足できず、いい加減うんざりした頃、ふらりと入った某ホテル。あえて名前は書きませんが、私が予約したホテルとほぼ同じ設備で、値段は約四割引。本因坊の顔がほころびます。で、いきなりチェックインしようとする彼を止め、まず部屋を見たほうがいいんじゃないか? と忠告しました。
鍵を持った掃除のおばさんについて三階へ上がります。はい。エレベーター降りた瞬間、言葉を失いました。理由は画像をご覧ください。なんだこりゃ? 私の頭に浮かんだ単語、それは「ブリズン・ブレイク」でした。一体誰が設計したんだか……。
心に傷を負った本因坊はホテル探しを断念。敗者気分で散歩です。ターペー門目指してとぼとぼと歩いていると、一軒の古本屋が目に入りました。長期滞在の外国人が多いチェンマイには古本屋が多いのですが、日本語の本を揃える店も少なくありません。
本好きの私はにょろにょろと入口脇のワゴンに近づき、そこに貼られた小さな注意書きを見て凍りつきました。注意書きには日本語でこう書いてありました。
「出入口につき、他のお客様のジャマにならない様にお願いします」
「買う気のない人は、さわらないで下さい!」
「ブツブツと、ひとりごとを言わないでください」
「立ち止まらない!」
立ち読みどころか、立ち止まることすら許されないとは……。逃げるようにその場を立ち去ったのは言うまでもありません。チェンマイ、油断できない町です。
(文・クーロン黒沢)
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