日曜特別企画 : 渡辺康史のおトイレ探訪 IN プノンペン その2

おトイレの奥の深さを感じていただく小さなコラム。味のある素敵なおトイレ、気に入って頂けたら嬉しいなぁ。

おはようございます。渡辺康史(やすし)です。前回のおトイレ探訪、いかがでしたか?

プノンペンは今、投資ブームに乗っかった日本人が大勢来てるんですよね。そんな日本人の腹を満たす和食レストランも正比例して増えてるんです。今回はまさに、そんな日本食屋さんのおトイレ。

まずは外から見ていきましょうか。壁はブラックの塗装で仕上げられてます。スタイリッシュですねえ。

「どこから見ても一点の曇りもない真っ黒ですね。いやァ、煩悩を捨て去った和の心ここにありと言いますか、何ともいえない潔さ。素晴らしい……」

「トイレのドアは頼り甲斐のあるしっかりとした木製です。これは杉かな? 素材はご主人自ら選ばれた? 香りもいい……。最高だなァ」

中は床から壁天井に至るまで黒で統一されていまして、便器とのコントラストが陰と陽を表現している──そんな気がします。それではちょっと失礼して──

「壁はご自身で? 職人さん? いやァ、精密な仕上げだ……。こちらの便器もCOTTO社製ですね。わかりました」

紳士用は小二台、大一台、洗面二台。必要にして充分。省けるものを一切省いた、研ぎ澄まされた侍の魂が伝わって来るような……。おやおや、カラン、ペーパー受け、掃除用具入れはステンレスで統一ですか。ご主人のこだわりが滲み出てますよね。

「あ~もう我慢できないなァ、ご主人、ちょっとお借りしてもいいですか?」

限られた空間のなか、贅沢に配置されたひとつひとつのピース。モダン建築の生み出す、圧倒的なまでの存在感と気取らないお洒落に、私、すっかりやられてしまいました。ンフフフ……。これをカンボジア人が真似すると、なにかひとつ余計なものが入ってしまうんですが、それがない。お見事です!
(文・木村五兵衛)

新橋備長亭
#53B, Street 63, Boeung Rang, Daun Penh, Phnom Penh
11:30〜14:00 | 17:30〜23:00
023 966 767

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