カンボジア職人紀行 : さすらいの包丁研ぎおやじを激写

名も無き路地の奥深くで、真面目に、そして寡黙に仕事と向き合う日陰の英雄たちを紹介する職人紀行。

日中、窓際で仕事をしていると、大体週に一度の頻度で、自転車に乗った白髪の老人が奇声を発しながら我が家の前にやってきます。

只のかわいそうな人だと思い見守っていたところ、ある日、近所のおばさんから包丁を受け取るや、自転車に積んでいた道具をおろし、いきなり路上で包丁研ぎをはじめました。ああ、そういうことだったか……。

俗世間の垢が抜けたガリガリの手足。余分な肉は一切ついてません。持ち物は水と砥石だけ。超シンプルなビジネスです。

爺さんは包丁ひとつ1分30秒ほどかけて研ぎ上げ、近隣のおばさん達から預かった10本ほどの包丁を片付けると、1本あたり1000リエルをもらい、去ってゆきました。

寡黙に包丁を研いでる間、彼は何を考えているのでしょうか。うつむいた爺さんの背中に哲学者のような風格を感じました。
(文・クーロン黒沢)



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