アホがバイクの修理なんか勝手にするからこんなことに!

s-0095 夜。珍しく仕事をしながら「平和すぎるなあ‥‥最近」と考えていると、誰かが家の門をガンガンガン!と激しく叩いた。

 こんな時間に誰だろう……と訝しげに思うも、叩き方が尋常じゃないので渋々外に出た。覗き穴から見ると、情けない顔で立っていたのは下働きや使いぱしりを頼んでいたカンボジア人のB君 (仮名)だった。

 門を開けると、B君は泣きそうな顔で自分の片手を指差した。見たら血まみれで、右手の人差し指の先っぽがちぎれ、皮一枚で繋がっていた‥‥。肝心な部分は夜闇でモザイクがかかっていたが、昼間だったら気絶していたかもしれない。

 聞くと、近所をバイクで走行中、愛車の調子が悪くなったため素手でチェーンをいじっていたとのこと。エンジンかけたまま‥‥。

 いじくっていたそのとき、まるで運命の如く何かの拍子でチェーンが回り出し、人差し指の先っぽを叩き斬ってしまったというわけで、いつの話だ!と訊ねると、なんと一時間近くも前だとかで、おまえ一時間もなにやってたんだよ! と思わず怒鳴りたくなる衝動を抑え、よくよく手を見ると、既に血は固まりかけていた。なんてこった。
 手遅れなのは痛いほど分かっていたが、とりあえず車に乗せて病院へ連れていくと、思った通り、中国系の医者は二秒も考えずに叫んでいた「もうだめ。切っちゃいましょう」と。もう少し時間が早かったら、こいつは指を繋げることができたのだろうか? 彼のこれまでの人生を振り返るに、所詮は切断される運命だったような気がしてならない。

 ともあれ、B君(19)は若くして、右手の人差し指を間接ひとつ分失ってしまった。その日、B君と仲の良くない親族の一人が危篤で、B君にも実家から呼び出しが掛かっていたそうだが、単に嫌いだからという理由でばっくれていたらしい。これはきっと、そいつの祟りに違いないと泣き叫んでいた。



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