ヤク中の人ってトリップ体験談を自慢気に話すけどなんで?

s-0116 海外のカフェーでよれた日本人を目にする。そんなとき、よく小耳に挟むのが「俺のトリップ体験談」である。いわく……

「もう三日もメシ食ってねえからよ。全然腹減らないんだ」
「そうそう、この前なんて効きすぎちゃって、思わず手首切る寸前で寸止めだよお」

など。永遠に続くかと思える不景気も日銀の円売り介入も何処吹く風、イラクでなにが起ころうとも彼らには関係無い。

この手の会話で面白いのは、どちらも相手の話を全く聞いてないところ。双方自分の体験が世界一すごいという自信に溢れているため、相槌は打つものの相手の体験は耳の奥で遮断され脳に伝わらない。

ICQで日本の仕事先と打ち合わせをしていたとき、今までまじめに話をしていた相手の文面が突如全てアルファベットに変わり、「aaaaaaa guruguru mawateruyooo」と言われた時は少し唖然とした。おまえもか?

状況を説明しよう。時刻は深夜。彼は翌日早起きしたかったので眠剤(マイスリー)を飲んで寝る準備をしていた‥‥らしい。が、話が長引いたため、途中で薬が効きだしてバカになり始めたという訳。

仕事の話は中断され「いま足の骨がゼリー状になってる」みたいなことを一生懸命説明してくれるが、そんなこと聞いても全然面白くないので「そうなんだ」という五文字をcontrol+Cして、五回貼り付けてICQを閉じた。

そんなある日、東京から小包が届いた。親切な知人が雑誌を送って下さったんだけど、中に一冊ヤンキー少年少女のバイブルと言われる「チャ○プロード」が入ってた。

一度でも読んだことのある人はご存知と思うが、太古の時代から後半モノクロページに好評連載中の「○橋健一郎スペシャルインタビュー・爆音とともに生きる戦士たち」が凄い‥‥。

扉には毎度、丸々太ってスキンヘッド。眉毛無し、中年マダム風サングラスという「まんま○クザ」風貌の○橋氏が、インタビュー対象の暴走族少年を従えカメラにガン飛ばす魅力的なグラビアが掲載されている。必見である。

○橋氏は全国の暴走族少年からとても恐れられているらしく、基本的に双方とも無口なのだが、どちらかと言うとインタビュー対象者が必死に敬語を使い、話を盛り上げ、○橋氏がそれに対して無愛想に相槌を打つという、とても珍しい形の構成になっている。いい仕事ぶりだ。少し長いけど引用したい。

○橋「渡辺君は逮捕歴あるのか」
少年「鑑別所二回です」
○橋「何で捕まったんだ?」
少年「二回とも暴走行為です」
○橋「耐えがたきを耐え、忍び難きを忍ぶ。押忍の精神だよな」
少年「はい‥‥」
(中略)
○橋「美人なのか」
少年「そうですね」
○橋「遊んだりするのか」
少年「いや、遊んだりはしないですけど、友達のお姉ちゃんなので、友達の家行くといるんですよ」
○橋「もう一人上にお姉ちゃんはいないのか」
少年「いません」
○橋「あと一人いればね。俺がその子に行くんだけど」
少年「はははは‥‥」

とまあ、こんな感じで少年たちの遠慮ぶりが痛ましい。○橋氏だからこそ可能な特殊インタビューなのだろう。わたしもあと五年くらいして刑務所に三回位行ったらスキンヘッドにして、顔に傷つけて、接着剤をドラム缶二本くらい吸い込んでから、ぜひ真似してみたい‥‥。以下私の妄想。

黒沢「コピーはどれくらいしてるんだ」
少年「週七回です。メディアが足りなくて困りますよハハ」
黒沢「共有はしてるのか」
少年「はい。でも最近は色々危ないんで、オフ交換が多いですね」
黒沢「メディアはどこで買うんだ」
少年「アキバのドラ○ンコンピュータとか‥‥色々です」
黒沢「そうか。耐えがたきを耐え、忍び難きを忍ぶ。押忍の精神だよな。ははは」
少年「ははは‥‥はは」
(文・クーロン黒沢)



コメントを残す