ひとくちブックガイド:大麻自衛官にもの申す

th_スクリーンショット 2014-07-25 12.16.30

麻は古来から人間と密接な関係を持っています──日本(まあ、世界の結構な数の国で)では大麻の所持や吸引が禁じられているけれど、多くの人は一回くらいやったことがあるか、そうでなくても、周りを探せば経験者が一人はいるという状態と思う(あ、妄想です)。

大麻を吸うと人を殺したくなるとか、ガリガリに痩せて死に至りますとか、大麻代を稼ぐため風俗で働かねばならないとか、そういう、警視庁の啓蒙するダメ・ゼッタイ神話に惑わされそうになったら「マリファナ・ナウ」「マリファナ・ハイ」(第三書館)を読んで正気を取り戻そう。これらは15年以上にもわたり版を重ねるマリファナ本の三国志である。

加えて続編の「マリファナX」も買えば完璧だが、勢い余って栽培に手を出し、後から訴訟だなんだ言っても責任は負わないのでそのつもりで。

この三冊に目を通すだけで、あなたもちょっとしたマリファナ博士。マリファナうんちくやら海外のマリファナ事情を軽快に語り、挙げ句の果ては水耕栽培に進出。マリファナビールやマリファナ丼のひとつも作れば、立派に懲役一年六ヶ月・執行猶予四年は固い。弁護士は注意深く選ぼう。

日本で稼ぐだけ稼いで、合法な国でやればいいじゃん……という冒険家の方にお勧めなのは「マリファナ青春旅行()()」である。「マリファナ・トリップ」というタイトルで十年ほど昔に出版された本の文庫版で、値段もお得。著者の麻枝光一氏(ペンネーム)は「大麻堂」というヘッドショップのおやじであり、人生負け組の元祖みたいな人だが、最近はおしゃれな大麻レストランなどを経営。いつの間にか勝ち組に行ってしまったという、大麻解放運動にも深く関わるその筋では有名な人である。

どうでもいい話だが、むかーし、私が何かのコラムでアメリカ製の電気吸引器具(ヒーターではっぱを加熱して、チューブで吸う)をバカにした際、氏から直々に激しい口調のお怒りメールを頂戴したことがある。あの喧嘩のけりはまだついていないが、それはそれ、麻枝氏の本はお薦めだ。

1970年代、韓国にてアメリカの不良毛唐から大麻を勧められた麻枝氏は、それを契機に世界数十カ国を放浪。目的はハッパを吸うこと。ただそれだけ。

で、どの国のページをめくっても、何はさておき、ブツを手に入れるところから話が始まるのがなんとも。普通のガイドブックではまず考えられない展開だが、ハッパ目的の旅行なのだから当たり前。売人からブツを仕入れたり、伐採したり、栽培したりする話が、便所にでも行くような口調で淡々と語られる。

全編にわたり大麻賛美が繰り返され、ドラッグ類に全く興味がない人でも一服したくなること保証付き。単なる海外旅行書としても面白い。

啓蒙されたら今度は布教である。こんなとき役立つのは「マリファナ・ブック」。大麻がいかに無害なものか、太古の時代から使われてきたか、どのような迫害・誤解を受けて来たか、こんな大麻製品もあるよ。薬にもなるんだよ。と、辟易するほど、しつこく、ねちねち主張する一冊。まあ、普通の人はチラムでボハッとできれば細かいことはどうでもいいのだが、理論武装には欠かせない一冊です。

つまらない字ばっかりの本はいやだと仰るなら、超弩級の写真集「すばらしきハッシシ」はいかがでしょう……。誰が命名したのか知らないけど、すごいタイトル。

世界中の大麻畑・ハシシ工場の現場を取材。アフガニスタンやネパール奥地など、とても危なそうな地域ばかりに潜入し、どう交渉したのか知らないが、普段絶対見られない製造過程の写真がバカバカ掲載されている貴重品。眺めているだけでハシシの製法がなんとなくわかり、いつ大恐慌が起きてもハシシ製造で食っていけそうな自信すら湧いてくる。製造者の顔も目線無しでばっちりだ!
(文・クーロン黒沢)



コメントを残す