ペースメーカー使ってんだよおい! 電源ッ!

160218
日本に一時帰国中。山手線のホームで電車を待っていた。私の前に立っていたのは故・石立鉄男を彷彿とさせる50代の男、髪型は1970年代に一世を風靡した鉄男アフロ。しかもうっすらオレンジ色。ほほう……と見とれるうちホームに電車が滑り込み、ゆっくり停車。ドアが開く……と、鉄男が突然怒鳴りだした!

「ちょっと、私ペースメーカーつけてるんで! 携帯の電源切ってください!」

大変だなあ……と同情しようとした矢先、鉄男は畳みかけた。

「何度も言わせるなよ! ペースメーカー付けてるんだよ! おい! そこ! 電源! ほらあんたも!」

えーっ……!?

鉄男は実に乗車率八割の車内で、ケータイをいじくっていた連中に次々と人差し指を突きつけ、有無を言わさず電源OFFを命じていた。電源切らず、ポケットにしまうだけのアホを見た日にゃ……。

「そうじゃねえよ! 電源だよ。おい電源! 早く! 出して! 切って!」

と、全くもって喧嘩腰でケータイ電源OFFを訴えるのである。

ココは優先席の近くでもなんでもなく、単に車両のど真ん中。こそこそケータイをいじっていた兄ちゃんなどは、鉄男に大声で「いますぐ切って! ホラ! 悪いけど(全然心がこもってない)」と怒鳴られ「へいへい」と薄ら笑いを浮かべつつ隣の車両へ走り去ってゆく始末。で、鉄男の周りにはいつの間にかドーナツ型の無人地帯が出来ていた。

鉄男は逃げていった男が座っていた場所に「ファーッ」と腰掛けると、

「まったく油断も隙もねえ……。おい、ケータイ!」と左右を警戒。電車が駅で停まるたび、同じことを繰り返し周りの人々を餌食にしつつ、我々にマナーの大切さを教えてくれるのであった……。

あまりに激しいんで、このまま後つけようか真剣に悩んだほどである。つけなかったけど。
(文・クーロン黒沢)



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