路上のジョーカー 人間誰しも幸せでありたい

プノンペンの横丁には予想もしないものが落ちています。

プノンペンの裏通り。ふと足元を見ると、何か白いカードが落ちています。んん? 目を凝らせば、それはトランプの「ジョーカー」。何か、見てはいけないものを見てしまったかのような、恐怖映画のオープニングさながら、漠然とした不安感に襲われる一瞬です。

路上にひっついた謎のジョーカー。皆さんも騙されたと思って、足元に注意を払いつつ道を歩いてみれば、実はかなりの頻度で目にするはず。不思議なことに落ちているのはジョーカーばかり。他のカードは見たことありません。なぜジョーカー?

カンボジア人は大のカードゲーム好き。木陰ではバイタクやトゥクトゥクのドライバーが。休日の玄関先ではおやじ連中が、台所の片隅では暇を持て余したおばさん軍団が──。真面目な顔でカードをやりとりしています。いずれにしても、傍らには小額紙幣の束が……。これが無いと本気になれないのは万国共通ですね。

私も何度かローカルに誘われ、大貧民もどきの輪に入った経験がありますが、柄や数字の組み合わせが異常に多く、我々の知る大貧民とは完全なる別物。「えっ? それもありなの!?」みたいな感じで、良いカモにされました。

カンボジアで売られている多くのトランプセットには、なぜかジョーカーが二枚入っています。良き市民が新品トランプの封を開け、まず最初にやるのは不要なジョーカーをそのへんに放り投げること。私が見たベトナム女性は、まるで親の仇かと思う勢いで余りジョーカーを地面に叩きつけ、戦闘前の気合いを入れていました。今日も一日、いいことがありますように。マジで。
(文・本因坊)



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